マダガスカル皆既日蝕ツアー
松島 弘一(日本スペースガード協会)



 皆既日食は大変すばらしい天体ショウである。しかし、それを見ることは、場合によってはかなり困難を伴う。第一に見られる時が限定され、せいぜい年に1,2回である。第二に見られる場所が限定され、観測適地が必ずしもアクセスしやすいわけではない。第三に、観測において最も重要な要素でありながら対処しにくいもの、すなわち天候の問題がある。皆既日食を見たということは、これらの拘束条件をどのような形態であれ、とにかくクリアした結果なのである。皆既日食自体見応えのあるところにもってきて、それを見る人は、それを見るまでに至る経緯でのさまざまな思いを胸に秘めているわけであるから、それが上乗せされた天体ショウはいやが上にも高揚したものになる。それは、その時、その場所で見た、私の皆既日食であって、そのすばらしさに普遍性を求めるわけにはいかない。それはたまたま隣りで見ていた○○さんの皆既日食とも同じではない。いわんやどんなすばらしい天体写真といえども、「私の皆既日食」とは無縁となる。

 2001年6月21日の夕方、マダガスカル島、イサロ国立公園で見た皆既日食は、今回のツアーに参加した方々の胸に、それぞれどのような皆既日食として残ったのだろうか。まあ、それを伝えることは無理というもの、ここでは参加された方々のエッセイと写真をご紹介しながら、マダガスカルでのツアーの経過をたどり、それぞれの方々の日食への思いのごく一部でも垣間見ることができればと考えた次第である。

6月15日(金)
 夕方四時、成田空港に集合して搭乗手続きを済ませたあと、特別休憩室に集合した「JSGAマダガスカル皆既日食ツアー」参加者20名は、乾杯、自己紹介などをして交流。夜7時過ぎ、すばらしい機内設備とサービスを誇るシンガポール航空のSQ-11便でマダガスカルへの旅路につく。昨年夏から準備を始め、紆余曲折を経ながらようやくここまでこぎ着けた。感無量である。
あとは航空機の遅れなどでスケジュールが乱されるようなことが起こらないこと、そして日食時に晴天に恵まれることを祈るだけである。

6月16日(土)
 午前1時過ぎにシンガポール空港に着き、一旦市内のホテルで休憩と朝食をとった後、再度空港に向かう。途中、マーライオンで最初の記念集合写真を撮る。
 シンガポール発アンタナナリポ(マダガスカルの首都)行のマダガスカル航空MD-11便は、いささかの遅れもなく予定通り離陸した。これまでの心配は全くの杞憂に終わった。航空会社はこの日のために万全の準備をしておいてくれたのかも知れない。なにしろ機内で全員に日食メガネのプレゼントまで用意されていたのだから。
 約9時間の飛行後、夕刻7時、アンタナナリポ空港に着く。空港の両替所でマダガスカルフランに交換し、それぞれ目もくらむほど分厚くなった財布を抱えて、市の中心にあるホテルに向かう。ホテルでJSGAの吉川副理事長が合流する。これで21名全員がそろったわけである。

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シンガポール、マーライオンの前で