マダガスカル皆既日蝕ツアー
エッセイ



インプレッション   坪根 秀一(横浜市)
 
バオバブ:

 私は、あの不思議な姿形をしたバオバブの林立する平原に夕日の沈む、お伽の国の絵のような幻想的な景色に見とれながら、なかなか、今、現実に自分が、日本から遠く幾千キロも離れたマダガスカルの地に居て、これを眺めているのだと言うことを実感することが出来ませんでした。
 何時か何かの写真で、バオバブの木を見て、何と奇妙な形をした木だろう、ずんぐりとした太い幹に、途中全く枝が無くて、てっぺんにのみ頭の髪の毛のように短い枝を茂らせている、遙か見知らぬ太古の地球に生えていたか、空想上のお伽の国に生えている木ではないかと思ったものでした。
 出来れば一度、実際のものを見てみたいなあと、その時ちらりと好奇心が湧いたのは事実ですが、とても現実のものになるとも、実現の可能性が生じるとも、全く期待しておりませんでした。
 それが、今、こうして美しい夕日の中、バオバブがシルエットとなって立ち並ぶ姿を眺め、見惚れているのです。夢心地のまま、二度とこの景色を見ることはないだろう、もっと良く見て置かなくてはと、しきりに自分に言い聞かせたものでした。

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Photo by Tsubone

皆既日蝕:

 突然、雲が切れて皆既が丁度始まりました。
それは、生まれて初めて、皆既日蝕を観望した瞬間でした。それは期待に違わない、素晴らしい景観でした。
 その様は、単に素晴らしいと言う言葉では表現し切れない、実に荘厳な神秘的な、いや、もっと神々しい畏敬畏怖の念を抱かせる瞬間でした。
 写真家の白川義員が、アルプス・マッターホルンのピークに曙光が射し、真っ赤に輝く様を初めて見たとき、「神々しい原初の姿」と表現したものに通じるのではないかと思います。正に神と名付けるべきものの為せる技で、神の摂理とも言うべきものかも知れません。皆既の始まる瞬間になって、雲が切れたのも宜なるかな」と、今、考えております。