美星スペースガードセンターからの報告

美星スペースガードセンターでのLER衛星の観測から-1
浅見 敦夫(美星スペースガードセンター)



 8月29日予定時刻より3時間遅れて16時00分に種子島宇宙センターより打ち上げられたH2Aロケットによって、ミラーボール状のLRE衛星が地球を周回する軌道に投入されました。日本スペースガード協会では、宇宙開発事業団からの依頼に基づいて打ち上げ当日からこのLRE衛星の観測態勢をとっていましたが、9月4日の早朝に美星スペースガードセンター(岡山県美星町、日本宇宙フォーラム所有)にて、この衛星の写真撮影に世界で初めて成功しました。

 美星スペースガードセンターでは、打ち上げの翌朝からLRE衛星を観測すべく磯部理事長以下観測スタッフ4名と宇宙開発事業団の野中氏の5人体制で観測に臨みました。当初予定ではLRE衛星は午前1時ころから東の地平線に現れ、薄明時には地平線からの仰角が45度に達するとのことでしたので観測条件は十分ではないもの夜空が暗く、地平線付近まで開けた美星スペースガードセンターでは良い観測ができると思われました。ただし、衛星表面の鏡が太陽光を反射する時だけ観測可能な明るさになるとのことで自転周期や何等星になるか等が事前の会議でも問題になっていました。

 ところが、この3時間の打ち上げ時刻の遅れのため観測可能時間が短くなるとともに薄明時の地平線からの仰角が15度と観測条件がかなり悪くなってしまいました。この日は夕刻から雲が多く観測開始時刻がせまった午前3時30分になっても一向に雲は退く様子はありません。それどころかますます増えてきます。結局、この日は曇天のためLRE衛星の観測が出来ないまま観測業務を終了しました。

 翌、8月31日早朝は雨天、9月1日は曇天、9月2日は晴れたもののLRE衛星の軌道との関係で日の出後に地平線上に現れるため観測できません。9月3日は曇天、と思うようにLRE衛星の観測ができないまま日数だけが過ぎていきます。既に観測スタッフも通常の体制に戻っています。
 そして、9月4日の早朝を迎えます。打ち上げから4日が過ぎましたが世界中どこからもLRE衛星の光学観測に成功したという情報は入りません。それどころか宇宙開発事業団から提供される衛星の予報も2種類届いています。このことはLRE衛星の正確な軌道が求められていないことを意味しますので観測スタッフとしては短時間により広い範囲を観測することを迫られます。ところが、午前2時過ぎ宇宙開発事業団の沢辺氏から「今しがたドイツでLRE衛星のレーダー観測ができたので修正予報を送ります。」との電話連絡が入ります。沢辺氏の口調は修正予報にかなり自信のある様子でした。観測者としては、未知天体の追跡観測では正確な予報は何にも替えがたいものです。観測スタッフの顔にも久々に笑顔がこぼれます。この時刻になると夕方からの小雨もすっかり上がり快晴となっていました。

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 午前3時45分観測開始、最初は望遠鏡を向けるのは最新軌道から求めた予報位置です。望遠鏡をコントロールするパソコンのキーボードにLRE衛星の予報位置の座標を打ち込みます。既に望遠鏡は衛星の動きに合わせて追尾するモードに入っています。通常、望遠鏡は恒星の日周運動に合わせて追尾しますが、衛星観測の場合は衛星の動きに合わせて追尾します。これは、いつでも望遠鏡の視野の中に入っていて都合が良いというだけでなく、暗い衛星であっても衛星の光がCCDカメラに蓄積されて写りやすくなるためです。

 望遠鏡の方向を表示するディスプレーは予報位置でぴたりと止まり、いよいよ撮影開始です。CCDカメラの露出時間は10秒です。この露出時間は過去に何度かLRE衛星と同様の軌道持つVEP衛星の観測から導き出したものです。(VEP衛星は約12等で4秒露出で観測しています)カメラコントロール用のパソコンに露出時間、撮影枚数をセットしマウスをクリック。約25秒ほどでディスプレーに画像が表示されます。観測者にとって画像が表示されるまでの時間がとても長く感じられる瞬間です。・・3秒・2秒・1秒 画像が表示されます。ディスプレーには衛星追尾により長く伸びた恒星のイメージが写っています。中心付近に目を移しLRE衛星のイメージを探しますがありません。マウスを動かしディスプレーの端まで探しますがやはり見当たりません。「予報位置を誤って入力したのではないか?」、「衛星の自転軸の方向が悪いのか?」それとも「衛星がはよほど暗いのか?」不安が脳裏をよぎります。しかし、入力位置の誤りはありませんでした。2枚目、3枚目、4枚目と次々と画像がダウンロードされディスプレーに表示されますがやはり衛星のイメージはありませんでした。「この望遠鏡の視野の広さがあれば衛星の通過時刻に2分程度の誤差があっても入ってくるはずなのに・・・」と思いながら別の2つの予報位置にも望遠鏡を向け撮影しましたが同様に写りません。そこで、今度は望遠鏡をH2A最終段ロケットに向け撮影することにしました。H2A最終段ロケットは長さ11mもあるため明るく容易にそのイメージを確認することができました。
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