デービット・アッシャー氏と観測したしし座流星雨

泉 潔(群馬県 JSGA会員)



 今回、光栄にも群馬の地でアッシャー氏と共にしし座流星雨を観測する機会に恵まれた。まず私の自己紹介と氏との交友歴から書かせて頂く。私は流星を主に観測対象にしているアマチュア天文家である。幼い頃から天体の美しさと神秘に惹かれ、おませにも小学校6年次(1971年)には、流星の研究を主とする主にアマチュアから成る団体である日本流星研究会に入会し、観測報告を送らせていただいていた。以来30年余り、様々な方々にご指導いただきながら観測研究を続けている。天文学会や宇宙研などの研究会でも時々発表させていただいているので、今後も皆様方にはご指導していいただければと思う。流星以外でも太陽系の関連天体である彗星や小惑星にも今の所観測対象にはなっていないが、非常に興味関心を抱いている。職業は高校教師であり、主に化学を教えている。

 さて、アッシャー氏に私が初めてお目にかかったのは、1996年富山で開催された流星会議に氏が招待講演者として呼ばれ、講演を聞かせていただいた時からである。当時氏は2年間のオーストラリアでの研究生活を終えられ、国立天文台の磯部氏の研究室に居られた。氏は英国のS.W.M.クリューブ、V.M.ナピエ両博士に師事され、学位を取られた。そこでの講演内容は主に学位論文の研究テーマであるタウリドコンプレックス(おうし座流星群複合体)についてであった。

 おうし座流星群はしし座流星群に比べてマイナーな存在であり、おそらく流星を専門にしている方以外はあまり知られていない流星群であると思う。10〜11月の2ヶ月にも及ぶ長期に渡る活動を見せるが、出現数が多くてもHR5程度で少ない流星群である。しかし、母天体は有名なエンケ彗星であり、火球を良く飛ばす流星群としても知られている。

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泉さんご夫妻とくつろぐアッシャ−さん

 氏の講演内容は、エンケ彗星自体が大彗星の破片のひとつであり、大昔に分裂した大彗星の破片と思われるエンケ彗星関連の特異小惑星、関連流星群なども数例見つかっているとのことであった。更にエンケ彗星の軌道を過去に遡ると、古代には地球に非常に接近し、少なからず地球環境にも影響を及ぼしていたであろうとのことであった。この会議で私が発表した研究は危しくも、おうし座流星群についてであり、過去25年程の主に自己の観測データをまとめて得られた流星群の長期変動についてであった。氏はこの時の講演でエンケ彗星と木星は7:3の共鳴関係があるため、流星物質の濃密部が存在し、それと地球の接近状況を計算すればおうし群が活発になる年を予測出来、長期に渡る同一条件で得られた流星観測のデ?タが重要であることも述べられていた。後のしし座流星群についての予報もこの考え方が生かされており、氏の流星群予報の基盤はすでにこの時に萌芽されていた。

 エンケ彗星は周期3.3年程の短周期彗星であり、古い流星群である。それに対してしし座流星群の母天体であるテッペルータットル彗星は33年周期で、流星群自体も比較的新しい。従って、しし座流星群の場合は共鳴だけでなく、回帰ごとのダストトレイルの摂動計算をされていることは周知の事実である。この時氏は私の発表に興味を示され、氏の計算されたおうし群の活動化が予報される年と私のデータの照合を試みられた。その結果良い一致が見られ、もう少し過去に遡って調査する必要性を示唆していただいた。

 氏との研究を通しての交流が始まったのはこの富山の夏からであり、その年12月には国立天文台にデータを持参したところ、一緒に論文を書こうと言っていただいた。氏が計算されたおうし群の活動が盛んになる年は母天体であるエンケ彗星の回帰には直接無関係であり、観測結果と良い一致を示す事実を目のあたりにした私は本当に目から鱗の落ちる思いで、流星天文学の新しい戦慄を感じた。この研究は無事、論文誌に掲載された。(Mon.Not.R.Astron.Soc. 297,23-27)

その後もアッシャー氏との交友は続いた。氏は機会ある事に私の住む群馬県に上越新幹線に乗って遊びにも来られ、観光や温泉を一緒に楽しんだ。氏が予言した1998年のおうし群の火球の活発化も見事に的中させ、さらに同年のしし群の火球の17時間も早い極大も古いダストトレイルの共鳴理論で見事に証明されていた。私は既にこの時点で氏が予報する2001年の流星雨には確信を抱いていた。
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