日本への想いをさらに深めてくれた「しし座流星雨」
−日本各地での講演旅行を終えて −
デービッド・アッシャー(日本スペースガード協会客員研究員)



科学の中で天文学ほど多くの人の想像力をかき立てるものはないないような気がします。地球近傍天体がその一つです。宇宙からの飛来、衝突、そして恐竜絶滅・・・。私は現在、日本スペースガード協会の客員研究員として、美星スペースガードセンターに滞在していますが、ここで進められているNEOに関するプロジェクトも、さまざまな天体の発見を通して、一般の方々との天文学でのコミュニケーションを図るすばらしい機会を提供しているのです。

 また、例えば皆既日食のような、スペクタクルな天文現象も多くの人々に興奮と天文学への興味を喚起します。2001年11月、日本をはじめ東アジア各地で観測されたしし座流星雨も、もちろん例外ではありません。私もそのすばらしいショウを日本で堪能した一人でした。その上私はここ2,3年、しし座流星群についての研究をしてきました。そのおかげで日本の各地で、具体的には北は札幌から南は岡山までのさまざまな場所で、お話をする機会に恵まれました。話しの内容は地球近傍の環境、すなわち小惑星、彗星、そしてしし座流星群を演出してくれる小さな個体粒子に関するものです。

 この講演旅行は、私にとっても素晴らしい経験でした。話しの内容は毎回同じようなものでしたが、聴衆の方々が毎回違いました。ある時は小中学生が多く、またある時は、観測に関しては経験も知識も私よりはるかに上にある方々の混じった、高度のアマチュア天文家が中心でした。内容は同じであっても、これらの人たちに同じように話しをするわけにはいきません。そういう意味で毎回が挑戦でした。

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講演中のアッシャーさん

  挑戦といえば、もう一つ挑戦したいと思っていたことがありました。日本語での講演です。私が日本に最初に来たのは1995年、短い休暇を楽しむためでした。日本に来る前、外国語を流暢に話すことは、その国に行きさえすればそれほど難しいことではないと思っていました。ところが日本に来てみて、それが簡単でないことがわかりました。磯部さんや吉川さんと知り合ったおかげで、1996年以降、三鷹の国立天文台に1年、鹿島の通信総合研究所に1年、その後も美星スペースガードセンターにしばしば滞在する機会を持つことができました。しかしどうも思うように日本語が上達しません。それにひきかえ、世界中に私の国の言葉を流暢に話す外国人が何と多いことかと、あらためて感心しています。というわけで私の講演会には通訳が必要でした。宇宙科学研究所の矢野さん、阿部さん、リブラ(株)の田部さん、東北大の土佐さんなど、多くの方にお世話になりました。
 私の最初の講演会は6月10日、兵庫県の西はりま天文公園でした。ここでは講演の前に西はりま天文台の鳴沢さんにいろいろと案内していただき、楽しい時間を持つことができました。そして翌週は東京および川崎で三日間連続の講演会が待っていました。これらの講演会で重要な部分(あえて一番重要と言ってもいいかな?)は、講演の後にありました。ビールを飲み、美味しい日本料理を食べて、講演会に参加された何人かと楽しい会話を楽しむ飲み会です。それは連日続いても悪くないものでした。もう一つ、この東京滞在中に心に残っているのは、この講演会ツアーをアレンジして下さった守山さんのお宅に招いて頂いたことでした。暖かいご家族の方とすばらしい朝食の時間を持つことができました。

 この連続講演の最後、日本プラネタリウム協会が主催した講演会で、山梨県立科学館から来られた高橋真理子さんとその同僚の方々にお会いしました。実は1カ月後の7月20日に、その山梨科学館で講演会が予定されていました。その日も朝から太陽が照りつけ、大変暑い日でした。中央線で高尾まで来て、普通列車で甲府に向かいました。日本に触れるには鈍行列車がよいという、松島さんのリコメンデーションでした。列車は大変混んでいましたが、守山さんが席を確保して下さいました。おかげで暑い日本の夏に触れることができました。高橋さんには講演の通訳だけでなく、また素晴らしい科学館の案内までしていただきました。翌週、名古屋市科学館での講演会を行い、日本の夏とお別れしました。
 8月から9月にかけて、北アイルランドにあるアーマー天文台に戻りました。秋に予定されているたくさんの講演会に備えて英気を養うためです。もちろん、アーマー天文台長には少し違う理由を説明しましたが。

 イギリスの冬は寒いと思われている方がよくおられますが、私は慣れているので特にそうは思いません。こういうことは相対的なもので、私も北海道の冬の寒さには震え上がるだろうと思います。幸いなことに、札幌での講演会は真冬ではなくて10月のはじめでした。この札幌市青少年科学館での講演の通訳は橋本先生にしていただきました。橋本先生は中野主一さんの友人で、講演会の後、三人で美しい北海道の観光をしました。次の週末はまた長野県上田市と群馬県館林市で講演会が続きました。このときは渡辺さんにすっかりお世話になりました。車で東京から上田、翌日に上田から館林まで運んでくれただけでなく、野辺山高原の観光や野辺山電波観測所の見学にまでさせていただきました。
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