マウイ紀行

− 米国におけるスペースデブリ・小惑星の光学探索 −(その2)
梅原 広明 (通信総合研究所)



研究会における研究内容以外の報告

 次の日10日からは磯部理事長と野中さんと3人でほとんどの行動をともにしました。10日は研究会の初日ですが、実は、夕方になっての受付と歓迎会だけでしたので、昼間はマウイ島内をレンタカーでざっと観光しました。マウイ太平洋センター (水族館) などです。そして、研究会開催場所のホテルに行き歓迎会に参加させて頂きました。磯部理事長から、多くの方々を紹介して頂きました。世話人の John Africano さん (Boeing 社) や、Near-Earth Asteroid Tracking (NEAT) プロジェクトを推進しているEleanor F. Helin さん (Jet 推進研究所)、静止軌道上の微小なデブリ探索を行なっているThomas Schildknecht さん (Bern 大学)、Patrick Seitzer さん (Michigan 大学) 等。また、海辺の庭で行なわれたのですが、多少の光があるにもかかわらず、天の川がよく見えるのが印象的でした。
 その日は、隣街で宿泊するキヘイに戻り、さて次の日  から講演が続きます。…という予定でしたが、朝、再び会場に行くと、世話人の方々が神妙な顔つきでそわそわしています。そして、我々がつけている研究会の名札を見て、すぐに名札をはずすように注意されました。米国本土で悲惨なテロが数時間前にあったことを、そのとき初めて知りました。この研究会は軍関係の方々が主催であるということもあり、少なくともその日は中止になりました。その日の夜に予定されていた MSSS 見学会もキャンセルです。途方にくれながら朝食だけはそこで頂きました。

 見学会が我々の主目的であったため、内部に入れないとしてもせめて MSSC の近くまでレンタカーで行こう、と磯部理事長と野中さんとで話し合いました。そこで、ただ一人、日曜日の見学会に割り当てられていた私が案内することになりました。せめて、敷地の門までは行けるのかと思っていましたが、手前で、軍の方に呼びとめられ、戻るように注意されました。その直後に撮ったのが右上の写真 です。そこは引き返し、頂上展望台には行けたので、そこから MSSC を見て来ました。なお、シルバーソードと一緒に記念撮影をしてきました。(実は、この植物は根がもろいので、1m以内に近づくことが条例で禁止されていることを、後で、ガイドブックか何かで知りました。)そして、次の日12日も研究会が始まる見込みはありませんでした。スペースデブリ関連の有志でミーティングを開いて終わりました。

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シルバーソードと筆者

研究会における講演内容の報告

13日、14日の2日間は駆け足で、当初に予定されていたすべての講演を行ないました。ただし、バッグは、講演会場に持ち込み禁止、入室時にはパスポート等で人物確認という厳戒体制のなかで行なわれました。発表時間は一人30分間の予定でしたが、15分間に短縮、質疑応答はなし、といったものでしたが、集中して情報収集ができたと思います。8つのセッションになっていました。セッション名は次の通りです。
 AMOS の進展・画像以外の観測データ解析・レーザー測距の応用・補償光学・天文観測・スペースデブリ・計算機・画像処理
これに、隣の部屋でポスターセッションが行なわれました。当初予定されていたプログラムは
 http://ulua.mhpcc.af.mil/AMOS2001/program.html
に掲載されています。
 文献 [1] で、1999年に米国での小惑星探索状況がまとめられていますが、この研究会では、AMOS を筆頭にしたそれらの追情報を示すことになります。磯部理事長 (写真 \#)、野中さんは「スペースデブリ」のセッションで、美星スペースガードセンターの紹介をされました。私はポスターセッションで文献 [2] の進展を発表しました。その他、「AEOSの進展」セッション以外のいくつかの主要な講演についてまとめます。(「AEOSの進展」が最も重要な講演でありましたが、そのエッセンスは見学会での説明と同じものです。)

◎ Near-Earth Asteroid Tracking (NEAT) について
 NEAT プロジェクトは 1995 年から、MSSC にある口径1.0m GEODSS 望遠鏡を使って始まりました。2000 年 2 月からは同じ場所にある MSSS 1.2m 望遠鏡に、探索の役割が移りました。(前頁右下の写真。)一方で、2001年4月からは、Palomar 天文台の 1.2m シュミットカメラも使い、すなわち2局体制で探索をはじめました。MSSS 1.2m 鏡にとりつけた CCD の性能は以下の通り:
4096×4096 画素、1画素は一辺 15μm、視野角は1.6°×1.6°、露出10秒間で限界等級は20等、読みだし速度は約30秒。主に静止軌道付近を探索し、静止軌道上のスペースデブリ探索にも貢献しているとのことです。また、超新星探索にも貢献しているようです。2000年3月から2001年8月15日までの1年半弱の間に検出した小惑星の総数は25,000以上で、うち発見した NEO は 42, 検出した NEO は 145 だそうです。

◎ 空軍研究所 Raven 小型自動制御望遠鏡について
 口径40cmの廉価な自動制御ができるニュートン式反射望遠鏡です。民生品や最新機器を手軽にとりつけ、技術試験を迅速に行なうことができるシステム。合計 3 機あり、それぞれ MSSS, RME, それとエドワード空軍基地にあります。遠隔操作による無人自動観測が可能です。CCD は Apogee 社の AP-7、 その性能は、512×512 画素、1画素は一辺 24μm、視野角は0.75°×0.75°、露出20秒間で限界等級は17等程度。機動力のある観測がかわれて、2001年 USAF Chief Scientist Award for Engineering (米空軍最優秀科学者賞)を得たそうです。

 このシステムは、実は、我々からみてもあまり目新しいものではありません。美星スペースガードセンターでも 25cm 小型望遠鏡が大活躍していますし、当通信総合研究所でも 35cm 望遠鏡でそこそこの結果を出しています。しかし、ここで注目すべきことは、この研究会で、大規模高性能望遠鏡の次に紹介されるシステムであり、受賞経歴があることです。そのくらい、米国関係者の間では、この小型望遠鏡を重要視しています。磯部理事長が、率先して、小惑星連携観測拠点を充実させるための研究支援助成を企画実行したり、インターネット天文台を推進しています。JSGA 会員である私も、この重要性を認識して、当研究所の望遠鏡を NEA 探索に連携できないか、真剣に考えるべきかと思った次第です。
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