編集室から


「2019年に地球に衝突する可能性のある小惑星が見つかった。」
編集を終えて、この最後のページの原稿を書こうとしているとき、新聞やテレビからこのニュースが流れました。CCNetやNASA/JPLのネットワークなども、関連ニュースを猛烈な勢いで送りはじめました。またかと思いましたが、その衝突予想年を見て、内心うれしくなってきました。大変個人的な話で、かつ不謹慎なものでありますが、2020年頃に適当な小惑星の衝突がないかと筆者は常々願っておりました。その時はぜひ落下地点まで出向き、座して待とうと。寿命を終わってもいい頃だし、いささかでも小惑星の研究に身を捧げた者にとって、その地球に迫ってくる姿をしかとみとどけ、その激突をこの身で受け止めることができるなど、夢のような話ではありませんか。2019年だと希望より1年早いのですが、これ以上のわがままは言えないでしょう。それまで健康を維持し、やるべきことはやっておく。明日からの生きる目標が明確になってきます。
まあ、これは冗談ですが、この話題の小惑星は2002 NT7という仮符号がつけられています。2002年7月9日、MITのNEO観測プロジェクト“LINEAR”のプロジェクトチームによって発見された、軌道周期2.29年、軌道傾斜角が42度という特異小惑星です。等級は18等ほどですが、その絶対等級は16.3等に相当するということで、この絶対等級を大きさに換算すると、直径が約2kmとなります。これが地球に衝突するとどんなことになるのか。しかし、その地球への衝突確率は20万分の1(まもなく25万分の1に修正される)、これはこれは小さな確率です。しかも発見されてから2週間たらず、太陽を回る軌道の1.7%程度が観測されたに過ぎません。これでは軌道の精度も十分ではありません。これは、地球に衝突しうる軌道にある天体として現在リストアップされている数百個の小惑星に一つメンバーが加わったというだけのようです。とても明日からの
生きる目標を設定するほどの天体ではありませんでした。

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「新しいNEOが発見され、とても地球への衝突云々を明確にするだけのデータが揃わないうちに、マスコミはセンセーショナルに報道する。その後、僅かな期間で衝突の危険がほとんど無いことがわかり、すぐに忘れ去られる。」NEO観測が世界的に進む中で、このパターンが、当分繰り返されることになりそうです。まあ、これはある程度、避けられないことかもしれません。しかし、このような中で、地球はいつも多数の天体が飛び交う中を進んでいるのだということが、実感として理解されてくるかも知れません。
7月26日付けのNASA科学ニュースに次のようにありました。
「もし、次に“危険な小惑星が地球を襲う”という見出しを見たときには、二つの問を自問してみよう。まずその天体が見つかってから1週間以上たっているか? もしそうでないなら1ヶ月後にチェックすることにしよう。おそらくその時には危険ではなくなっているだろう。次に衝突の確率は? もしそれが宝くじの1等に当たる確率と同じ程度なら、何も心配することはない。」
ただし、衝突することもあるということは、決してお忘れ無いように。
(松 島)

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