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小惑星の地球衝突って本当?

天文ガイド「素朴な質問ルーム」より
(天文ガイド 1998年4月号 p.103)


天文ガイドの「素朴な質問ルーム」に寄せられた質問に回答しました。天文ガイドの編集部から許可をいただきましたので、その内容を掲載します。


(質問)
小惑星が地球に接近、衝突する危険がある、という話を聞いたことがあるのですが、本当ですか? これまでにいくつくらいの小惑星がどのくらいの距離まで近づいたか、など、その危険性について教えて下さい。


(回答)
 太陽系には、9個の惑星やそのまわりを運動している衛星以外に、小惑星や彗星といった小さな天体が非常にたくさん存在しています。特に、小惑星は軌道が非常に正確に決定されているものだけでも8千個以上あります。軌道がそれほど正確には求まっていないものも含めますと、すでに3万5千個近くの数の小惑星が知られているのです。さらに、観測されただけで軌道まで求められていないものやまだ観測もされていないようなものもたくさんありますから、太陽系には無数といっていいほどの小惑星があることになります。

 その小惑星の多くは、火星と木星の軌道の間にあります。しかし、最近では火星の軌道の内側やより遠く冥王星の軌道の外側でも多くの小天体が発見されています。このうち、火星の軌道の内側に来るような小惑星が地球に衝突する可能性があるものです。現在、そのような小惑星は4百個ほど知られています。

 では、実際に小惑星はどのくらい地球のそばまで接近しているのでしょうか? アメリカのケンブリッジにあるスミソニアン天文台にはマイナープラネット・センターというところがあります。ここには、世界中で観測された小惑星のデータが集まってきて、そのデータが整理されていますが、小惑星の地球接近についても情報が公開されています。そこから地球に接近した小惑星のベスト10を抜き出したみたのが表1です。

 表1を見ると、1994年12月9日に1994XM1という名前の小惑星が地球から11万キロメートルのところを通過したのが最も接近したものであることが分かります。11万キロメートルというと地上のスケールではとてつもなく長い距離のように思えますが、太陽系のスケールでみますとほとんど衝突といってもいいくらいの接近です。地球から月までの距離が約38万キロメートルですから、その3分の1以下のところを通過したことになります。また、放送衛星や気象衛星がある静止軌道は地表から3万6千キロメートルのところにありますから、静止衛星軌道の約3倍くらい遠くを小惑星が通り過ぎたことになるのです。

 最近、月軌道の内側を通過した小惑星が4つあるということが表1から分かりますが、ここで注意しないといけないことは、このような接近は最近になって特にたくさん起こっているわけではないということです。表1を見ると、確かについ最近に接近が観測されたものが多いですが、これは、技術が進歩して暗い天体も観測できるようになったことと、地球に接近する小惑星というものに対して関心が高まっていくつかのグループが積極的にそのような天体を探す努力を始めたためです。おそらく、それ以前も、私たちが気づかないうちに、小惑星が地球のそばを通過していたに違いありません。

 また、小惑星の他に彗星も地球に接近する可能性がありますが、マイナープラネット・センターによりますと過去の彗星の接近は表2のようになっています。彗星については、今のところ小惑星ほど接近したものはありませんが、やはり地球に衝突する可能性はあります。

 そうしますと、誰でもそのような天体が地球に衝突するのではないかと心配になることと思います。実際、天体の衝突という現象は、太陽系の長い歴史の中ではありふれた現象なのです。その証拠に、月をはじめとして多くの太陽系天体の表面にはたくさんのクレーターが見られますが、これらのほとんどは小天体の衝突によってできたものなのです。地球の表面にすら、そのようなクレーターがかなり残っています。そして、私たちは1994年7月にシューメイカー・レビー第9彗星が木星に衝突するのを目撃しました。その時は、木星の表面に地球よりも大きな「あざ」ができました。

 では、地球に天体が衝突してきたらどうなるのでしょうか? 衝突してくる天体が、小惑星や彗星のように小さい場合、地球本体には大した影響はありません。つまり、地球は今までどおりに自転しながら太陽のまわりを公転し続けることになります。ところが、地球上の自然環境は、非常に大きな影響を受けると考えられています。もちろん、天体が衝突したところは跡形もなく破壊されてクレーターができますし、大きな地震が起こったり、海に衝突すれば巨大な津波が発生したりするでしょう。しかし、このような部分的な被害だけでなく、地球の気候を全世界的に変えてしまい、世界中の人々や生物にとって深刻な問題が生じると考えられています。

 安心していいことに、現在発見されている小惑星が近い将来に地球に衝突する可能性はありません。これは、天体の軌道を計算することで確認されています。ただし、まだ発見されていない天体については当然分かりません。地球軌道のそばには、直径が1キロメートル以上の小惑星が2千個くらいはあるだろうと考えられています。その多くはまだ発見されていないのです。

 このような天体の衝突問題を考える組織として、1996年3月に「国際スペースガード財団」というものが発足されました。本部はイタリアにあり、天文の研究者が中心となって天体の衝突問題について検討しています。さらに、これを受けて1996年10月には「日本スペースガード協会」というものも発足しています。天体の衝突というと、興味本位に大げさに扱われがちですが、科学の立場からこの問題に取り組んでいくことが重要です。天体が地球に衝突することが、事前に分かればいろいろ対策をとることが可能になります。つまり、衝突しそうな天体をあらかじめすべて発見してしまえば、天体の衝突をむやみに恐れる必要はなくなるのです。

吉川 真(郵政省 通信総合研究所)

(表1)地球に接近した小惑星ベスト10

接近距離
(万km)
接近時刻
年/月/日
小惑星の名前
11 1994/12/ 9.8 1994 XM1
15 1993/ 5/20.9 1993 KA2
17 1994/ 3/15.7 1994 ES1
17 1991/ 1/18.7 1991 BA
44 1995/ 3/27.2 1995 FF (月に20万kmまで接近)
45 1996/ 5/19.7 1996 JA1
47 1991/12/ 5.4 1991 VG (人工物体の可能性あり)
69 1989/ 3/22.9 (4581) Asclepius
72 1994/11/24.8 1994 WR12
74 1937/10/30.7 (Hermes)

[マイナープラネットセンターのホームページより改変]

(表2)地球に接近した彗星ベスト10

接近距離
(万km)
接近時刻
年/月/日
彗星の名前
230 1770/ 7/1.7 D/1770 L1 (Lexell)
340 1366/10/26.4 55P/1366 U1 (Tempel-Tuttle)
470 1983/ 5/11.5 C/1983 H1 (IRAS-Araki-Alcock)
500 837/ 4/10.5 1P/837 F1 (Halley)
550 1805/12/9.9 3D/1805 V1 (Biela)
590 1743/ 2/8.9 C/1743 C1
590 1927/ 6/26.8 7P/Pons-Winnecke
660 1702/ 4/20.2 C/1702 H1
930 1930/ 5/31.7 73P/1930 J1 (Schwassmann-Wachmann 3)
940 1983/ 6/12.8 C/1983 J1 (Sugano-Saigusa-Fujikawa)

[マイナープラネットセンターのホームページより改変]


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