小惑星ニュース - JSGA Web News No.155 -
BSGCに於ける人工衛星の検出と観測作業  美星スペースガードセンター(BSGC)では、その開所以来、50-cm反射望遠鏡と 1.0-m反射望遠鏡を使用して、地球の軌道上を回るスペース・デブリの検出と観測を 行なってきた。スペース・デブリとは、衛星軌道上に打ち上げられたロケットや人工 衛星の中で運用されなくなって放置されたものやそれらの破片をいう。地球の周囲に は、このような使われなくなったロケットや人工衛星が多数、飛行している。これら は「宇宙のゴミ」とも呼ばれる。現在、そのような宇宙ゴミの中で約1万個ほどにつ いては軌道が分かっているが、実際には、発見することが難しいより小さなゴミが非 常に多数、地球の周りを公転している。  最近になって、このようなスペース・デブリが宇宙ステーションや運用中の人工衛 星に影響を及ぼすことや、また、衝突することも心配され、その対策が注目され始め た。美星スペースガードセンターでは、晴れた日には毎夜、望遠鏡で夜空を観測し、 スペース・デブリを含め、小惑星などの移動天体の発見や追跡観測を行なっている。 しかし、当センターでのデブリ観測は、一般の方、特に天文関係の皆さんには、あま り知られていない。そこで、2000年以来の当センターのこの種の衛星の発見や観測活 動などを紹介することにした。なお、スペース・デブリについては、当会のウェッブ・ サイトdebrisを参考にされたい。 ●これまでの観測  2002年7月以降、2012年6月まで、毎年半期(1月〜6月までと7月〜12月までの期間) ごとの当センターが行なった衛星の観測数を表1に示す。これを図示したものが図1で ある。 表1:衛星の観測数(2002年7月以後) 年 前半 後半 1年計 衛星数 ---------------------------------------------- 2002 6,478 6,478 1,403個 2003 3,091 3,278 6,369 1,524 2004 5,625 5,423 11,048 1,199 2005 2,704 7,331 10,035 1,751 2006 6,343 6,270 12,613 2,421 2007 7,842 7,490 15,332 2,533 2008 6,905 7,329 14,234 2,204 2009 9,098 8,205 17,303 2,719 2010 7,773 13,178 20,951 3,123 2011 10,148 11,613 21,761 3,133 2012 14,044 364 14,408 1,824 ---------------------------------------------- 73,573 76,959 150,532 23,834個  この中には、存知の衛星以外に未確認の衛星も含まれている。この10年間に得られ た衛星の観測数は、15万532個にのぼる。ただし、末尾の2桁〜3桁の数字には、多少 のカウント・ミスもあることをご了承いただきたい(これについては、以下の数値も 同様である)。いずれにしても、1年間に単純平均で約1.5万個の観測が行なわれた。 この観測数は、2010年以後には、その数は2万個を越えた。今年度は、観測数は3万個 に近づくだろう。この10年間でとらえられた衛星は、総計23,834個、つまり、衛星1 個について、約6個の観測が行なわれたことになる。なお、存知の衛星が2夜にわたっ て観測されている場合、個別の個数として扱っている。 ●未確認衛星(スペース・デブリ)の検出  当センターでは、存知の衛星観測と同時に未確認のスペース・デブリ(以後、未確 認衛星と呼ぶ)の検出(発見)作業を行なっている。これらの未確認衛星には、その 発見順にXで始まる5桁の数字の美星符号(X00001〜)がつけられ、2002年7月以後の 10年間の期間には、X00748からX13436まで、1万2689個の未確認衛星が検出された。 この数は、表2の値と若干の違い(44個少ない)があるが、これは、表2の値には、 あとになって符号の訂正されたものや取り消されたものが含まれているため。また、 この10年間に検出として、発見マーク、アステリスク(*)付で、初期に報告された 観測は1万2815個ほどある。これらの中で、観測フォマットとして正しいものが、表 2の1万2733個である。その検出数を表2に示す。これらを図示したのが図2となる。 表2:衛星の検出数(2002年7月以後) 年 前半 後半 1年計 --------------------------------- 2002 0 1,055 1,055個 2003 955 460 1,415 2004 263 536 799 2005 326 1,296 1,622 2006 1,287 1,085 2,372 2007 1,432 601 2,033 2008 446 206 652 2009 249 219 468 2010 272 464 736 2011 428 545 973 2012 601 7 608 --------------------------------- 6,259 6,474 12,733個  表2を見るとスペース・デブリの検出数は、2008年以後は、約半数以下に減ってい るようにも見えるが、この未確認の衛星の当センターでの定義がこの10年間に幾度か 変更されたためである。従って、1年間に検出される未確認衛星は、およそ1,000個ほ どと考えられる。ただし、この中には、当センターで過去の衛星と同定されたものも、 X符号をつけて報告されているものもあること。もちろん、この数値中には、同一天 体も含まれている可能性もあることに注意が必要である。 ●未確認衛星の検出光度  2012年7月以後に検出された未確認衛星の中で、表2の未確認衛星の観測欄に光度 の記載がある12,706個の検出光度の分布が表3である。 表3.検出光度の分布 等級 個数 ----------------- 5等 0個 6 3 7 32 8 140 9 520 10 1,554 11 2,591 12 3,123 13 2,414 14 1,459 15 664 16 171 17 27 18 6 19 0 20 2 21 0 -----------------  その発見光度の分布を図示したのが図3である。この図を見ると分かるとおり、当 センターで検出される未確認衛星は、12等級を中心に比較的明るい衛星が多い。これ らの衛星は、あとで説明するとおり、そのほとんどが静止軌道上を動く衛星である。 これは、当センターでは、主に、天の赤道上、やや南側をサーベイして、静止軌道近 くにある衛星の検出と観測を行っていることによる。衛星が静止軌道上近くを運行し ている場合、12等級の検出光度は、衛星表面の反射率、太陽光線のあたり方にもよる が、およそ5-m前後の大きさとなる。聞くところによると、欧州では、約20等級の衛 星も観測対象としているとのことであるが、この場合の大きさは約1-mとなる。  静止軌道にある衛星を検出・観測する場合、望遠鏡を固定して撮影する。静止軌道 上にこれほどたくさんの未確認衛星が存在するならば、12等級ほどの明るい衛星なら ば、小口径でもとらえることが可能となる。しかも、赤道儀は不要である。このため、 この分野に興味を持っている方は、一度、検出・観測を試みても面白いだろう。また、 軌道に興味を持つ方は、スペース・デブリの軌道カタログを独自に作成することも可 能となってくる。 ●その軌道分布  2000年から始まったスペース・デブリ・サーベイで検出された未確認衛星について いくつかの衛星の軌道決定と軌道改良を行なった。軌道決定は、天体の軌道計算用の ガウス・マートンの軌道決定を地心軌道用に変更したもの。軌道改良は、これまでの 要素変化の方法を地心軌道用に変更したもので、いずれも、独自に開発した。決定・ 改良できた衛星軌道は、X00004(2000年2月10日発見)からX00775(2002年8月3日発 見)までの246個で、当センターでの未確認の衛星の軌道計算は、そこで終了した。 表4. 表5. 長半径の分布 離心率の分布 長半径 個数 離心率 個数 -------------------------------- 1.00 ER 11個 0.00 133個 2.00 0 0.05 27 3.00 29 0.10 10 4.00 15 0.15 10 5.00 18 0.20 8 6.00 140 0.25 4 7.00 20 0.30 3 8.00 3 0.35 3 9.00 3 0.40 3 10.00 4 0.45 2 11.00 0 0.50 3 12.00 0 0.55 2 13.00 0 0.60 3 14.00 1 0.65 14 15.00 1 0.70 16 16.00 0 0.75 2 17.00 1 0.80 1 18.00 0 0.85 1 19.00 0 0.90 0 20.00 0 0.95 0 --------------------------------  これらの軌道長半径の分布と離心率の分布を表4と表5に示した。これらを図示し たのが図4と図5である。表4を見るとわかるとおり、当センターで検出されたほと んどの衛星は、軌道長半径a=6 ER(約3.8万km)とほぼ静止軌道上にある衛星の長 半径と同じとなる。なお、長半径aは、地球の赤道半径(6378.14-km)を単位(ER= 1.0)としている。静止軌道は、赤道上、地心から35,786-kmの位置にある。次に図5 を見ると、これらの衛星の大半は、ほぼ、円軌道上を動いていることがわかるだろう。 つまり、検出されたほとんどの未確認衛星は、静止軌道上を動いていたことになる。 なお、長半径がa=6 ER近くにあっても、離心率が大きければ、軌道は長円軌道とな り、静止軌道ではないことに注意して欲しい。  最後に2000年3月9日に検出され、その後、3月22日まで3夜にわたって追跡観測が行 なわれたX00141についての軌道計算の結果を示す。残差が大きいのは、静止軌道上の 衛星は、1秒あたり、約15”ほど移動しているため、観測時刻の精度が±1秒の場合、 その位置には±8”ほどの誤差が生じることによる。 The following improved orbital elements, by S. Nakano, are from 11 observations made at Bisei during 12.9 day span. The mean residual is +/- 2.65 arc seconds. X00141 Mo = 354.43870 +/- 1.84415 (m.e.) Epoch = 2000 Mar. 14.0 DT Peri.= 39.92744 +/- 4.82794 n = 360.9750638 +/- 0.0013035 Node = 269.30733 +/- 6.24068 (2000.0) n1 = -0.1172931 +/- 0.0004458 Incl.= 0.01002 +/- 0.00086 n2 = 0.0101100 +/- 0.0004366 q = 6.6080106 +/- 0.0013032 ER a = 6.6108639 +/- 0.0000905 ER e = 0.0004316 +/- 0.0001966 P = 1435.772 +/- 0.029 minutes H = 28.78 (G=0.15,k=5.0) Dia-m.= 6.0 meters [ T = 2451617.51540633 (DT) Epoch = 2451617.5 (DT) ] Px = +0.6324994398 Qx = +0.7745607969 Py = -0.7745608085 Qy = +0.6324994497 Pz = +0.0001122393 Qz = +0.0001341061 Object Date/ UT R.A. (2000) Decl. *** O-C *** Code/Obs h m s . , " " " X00141 *2000 03 09.67682 12 12 20.81 -05 36 39.4 2.8+ 0.3- 300/SG 11.4V 28.58 X00141 2000 03 09.67783 12 13 48.01 -05 36 39.3 1.0- 0.2- 300/SG 11.4V 28.57 X00141 2000 03 09.67917 12 15 44.38 -05 36 38.9 4.2+ 0.2+ 300/SG 11.4V 28.55 X00141 2000 03 09.68120 12 18 39.44 -05 36 38.6 6.4- 0.5+ 300/SG 11.5V 28.63 X00141 2000 03 13.80384 15 31 26.60 -05 35 27.7 6.1+ 1.9- 300/SG 13.0V 28.91 X00141 2000 03 13.80865 15 38 23.04 -05 35 25.4 0.4+ 0.4- 300/SG 12.9V 28.76 X00141 2000 03 13.81529 15 47 58.23 -05 35 22.9 3.1- 1.0+ 300/SG 12.9V 28.69 X00141 2000 03 14.80065 15 30 46.33 -05 35 16.7 1.2+ 0.1+ 300/SG 13.2V 29.15 X00141 2000 03 14.80252 15 33 28.00 -05 35 15.5 4.5- 1.0+ 300/SG 13.0V 28.93 X00141 2000 03 22.55028 10 01 03.11 -05 35 33.1 1.8- 0.1+ 300/SG 12.1V 28.78 X00141 2000 03 22.55090 10 01 57.09 -05 35 33.4 2.8+ 0.1- 300/SG 12.3V 28.98 - end of observations - JSGA Web News No. 155 2012 July 15 日本スペースガード協会 (c) Copyright JSGA 2012 中野 主一

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