[日本スペースガード協会]

小惑星1997 XF11が2028年に地球に接近!


[ニュース]

◆IAUサーキュラー:6837号(1998年3月11日)

1998年3月11日付けの国際天文連合のサーキュラー(IAU Circular)6837号に よりますと、小惑星1997 XF11が2028年10月26.73日(世界時)に地球から 0.00031天文単位(約46,000km)のところまで接近するとのことです。 この小惑星の絶対等級は17等ということですから、直径は1kmから2kmくらい あるものと思われます。

これほど大きな天体が地球からこのような至近距離に接近することが予想さ れたのは今回が初めてです。放送衛星や気象衛星のような静止衛星の高度は 地球中心から約42,000kmほどですから、ほぼその高さまで接近することにな ります。

なお、IAUサーキュラーによると、軌道接近予想の誤差がまだ0.002天文単位 (約30万km)もあるとのことですので、今後の観測によって、より正確な軌 道を求める必要があります。

◆IAUサーキュラー:6839号(1998年3月12日)

1998年3月12日付けのIAUサーキュラー(6839号)によりますと、小惑星1997XF11 の接近距離は0.0064天文単位(約96万km)になるとこことです。接近時刻は、 2028年10月26.3日です。

これは、この小惑星が1990年に撮影されたフィルムに写っていることが確認 されたので、そのデータを用いて小惑星の軌道が再決定され、その新しい軌道 で接近が計算されたものです。 この距離ですと、衝突の心配はありませんが、いずれにしましても今後の 観測によってより精密な軌道を求める必要があります。

小惑星 1997 XF11 についての国立天文台・天文ニュース(162)  続報(164)

小惑星 1997 XF11 についての「あすてろいど(22号)」の記事



[小惑星 1997 XF11 の軌道運動について]

−1998年天文学会春季年会(1998.3.16-18)において発表−

A.要旨

 1998年3月11日発行のIAUサーキュラー(6837号)に、1997年12月6日に発見された 小惑星1997 XF11が西暦2028年10月26.73日(世界時)に地球中心から0.00031天文単 位(約46,000km)のところを通過するという予想が掲載された。この距離は、静止衛 星の高度にほぼ匹敵する至近距離である。さらに、この小惑星は、絶対等級が17等で あることよりその直径は1kmから2kmと予想され、地球に接近する天体としては比較的 大型のものである。従って、マスコミでは、あたかも地球に衝突するかのような報道 もあった。

 次の日(3月12日)のIAUサーキュラー(6839号)では、1990年にこの小惑星が撮影 されていることが分かったため軌道決定をし直したところ、接近距離は0.0064AU (約96万km)となるということが掲載された。この距離が正しければ、地球との衝突 を心配する必要は全くないことになる。いずれにしても、現在発表されている軌道要 素はまだ誤差が大きいため、今後の観測によってより精度の高い軌道決定を行うこと がまず重要となる。

 ここでは、IAUサーキュラー等に掲載された軌道要素をもとにして、この小惑星の 今後の軌道進化をまとめて示す。さらに、軌道要素のわずかな違いが、衝突というよ うなクリティカルな現象を予想するときに大きな影響をもたらすことを指摘する。ま た、このような地球接近小惑星についても、軌道要素が正確に求められていれば、数 十年先に天体が衝突するかどうかについては確定的に言うことができることも示す。

 つまり、天体の地球衝突のような問題は、地球に接近する天体の軌道を観測によっ て精密に決定しておけば、むやみに恐れるような問題ではなくなるのである。

B.軌道・位置

現在(1998年3月12日)と2028年10月26.7日の、この小惑星と惑星 の位置と軌道を示す。

  [図]1998年3月12日   [図]2028年10月26.7日

注意:中心が太陽で、円に近い軌道が内側から水星、金星、地球、火星。
   楕円形の軌道が1997 XF11。

C.1998 XF11 の軌道要素

IAUC6837と6839が発表された時点での小惑星 1997 XF11 の軌道要素を示す。

軌道要素IAUC6837IAUC6839
軌道長半径(a)1.4417508 (AU)1.441710 (AU)
軌道離心率(e)0.48380960.483775
軌道傾斜角(i) 4.09484 (度) 4.0948 (度)
近日点引数(ω)102.46984 (度)102.4645 (度)
昇交点経度(Ω)214.12811 (度)214.1319 (度)
平均近点角(M) 96.67323 (度) 96.6800 (度)

注意: IAUC6837そのものには軌道要素は掲載されていない。
    IAUC6839では、平均近点角の代わりに近日点通過時刻が示されている。
    全ての桁が有効数字であるわけではない。

D.軌道運動の様子

上記の軌道要素に基づいて、1997XF11の軌道運動を計算してみた。 その結果をここに示す。計算は、吉川(通信総合研究所)による。

(D.1)軌道要素および地球との距離の変化:

  [図]IAUC6837の要素に基づく場合   [図]IAUC6939の要素に基づく場合

注意:横軸は西暦の年。
   縦軸の記号は以下の通り。
     a:軌道長半径、 e:軌道離心率、 i:軌道傾斜角
     w:近日点引数、 n:昇交点経度、 p:近日点経度
     m:平均近点角、 D:小惑星−地球間の距離

(D.2)地球とのニアミスの時刻・距離・相対速度

ここでは、地球と小惑星1997XF11との距離が0.2AU以下になる場合を 取り出してみることにする。

  [図]IAUC6837の要素に基づく場合   [図]IAUC6939の要素に基づく場合

注意:横軸は西暦の年。
   縦軸の記号は以下の通り。
     Dist:小惑星と地球の距離
     Vel:接近時の相対速度

図に示されているニアミスの時刻・距離・相対速度を表にまとめると、 次のようになる。

IAUC6837の要素に基づく場合
年/月/日接近距離(AU)相対速度(km/s)
2002/10/31.1070.0649615.995
2016/06/11.6640.18317 9.777
2028/10/26.7240.00026614.773
2030/10/18.4500.0878911.594
2032/09/30.8990.1695810.430
2042/06/25.0640.1735610.032
2044/06/08.3430.0995311.755
2046/06/01.1650.0633514.266
2048/05/25.5610.1225717.041

IAUC6839の要素に基づく場合
年/月/日接近距離(AU)相対速度(km/s)
2002/10/31.0220.0635615.952
2016/06/10.6340.17984 9.766
2028/10/26.2630.0064313.912
2035/06/11.7200.18404 9.744
2040/11/ 5.8270.1757419.294

(D.3)西暦2028年の接近の様子

2028年のときの地球接近の様子を図に示す(図の見方に注意!)。

注意:

  [図]IAUC6837の要素に基づく場合   [図]IAUC6939の要素に基づく場合

E.軌道要素の決定精度と接近・衝突予測

最後に、軌道要素が正確に求められている場合、2028年の接近予測にどのくらい 誤差が見込まれるのかを簡単に確認してみることにする。

◆方法

仮に、IAUC6837とIAUC6839の時点での軌道要素がほとんど正確に求められたもので、 誤差は各軌道要素の最小桁に±1程度であるとする。この場合、軌道要素の初期値 のまわりに最小桁に±1だけ異なる729個の点をとり、それらの軌道進化を調べる。
     ↓
つまり、点の集合体としての軌道進化の様子をみる。

◆結果

<IAUC6837の場合>

  軌道要素の初期値:
    a =1.4417508  ±0 ±0.0000001
    e =0.4838096  ±0 ±0.00001
    i =  4.09484  ±0 ±0.00001
    ω=102.46984  ±0 ±0.00001
    Ω=214.12811  ±0 ±0.00001
    M = 96.67323  ±0 ±0.00001

  2028年の接近時のずれ:
    最接近時刻のずれ→±2分
    最接近距離のずれ→±1,500km
<IAUC6839の場合>
  軌道要素の初期値:
    a =1.441710  ±0 ±0.000001
    e =0.483775  ±0 ±0.000001
    i =  4.0948  ±0 ±0.0001
    ω=102.4645  ±0 ±0.0001
    Ω=214.1319  ±0 ±0.0001
    M = 96.6800  ±0 ±0.0001

  2028年の接近時のずれ:
    最接近時刻のずれ→±14分
    最接近距離のずれ→±23,000km
◆まとめ

軌道要素が十分正確に求められていれば、30年程度先に起こる接近・衝突予測は十分 に精度よく予測できる。

※以上の結果についてのお問い合わせは、 吉川(通信総合研究所→宇宙科学研究所)までお願いします。