4. 小惑星探しの基礎知識



小惑星をみつけよう

夜空には無数と言ってもいいほどの星々が輝いています。

ところがこの夜空には、肉眼ではほとんど見ることができない天体もたくさん存在しているのです。 それが小惑星です。 小惑星は、望遠鏡を通して眺めてみても、なかなか目では見ることはできません。

では、どのようにして小惑星をみつけるかといいますと、望遠鏡にカメラを取り付けて、写真を撮るのです。 もちろん、カメラとしては暗い天体まで写すことができる高感度のカメラを使いますが、さらに露出時間をかけることで、光を蓄積してより暗い天体まで撮影するのです。 ただし、暗い天体まで撮影できたとしても、撮影された天体が小惑星かどうかはすぐには分かりません。 小惑星であると分かるためには、その天体が移動していることを確認しなければいけないのです。 そのために、観測では、時間をおいて何枚か同じ領域の写真を撮影します。 その写真を比較することで移動している天体を探すのです。

この「アステロイド・キャッチャー B-612」があれば、誰でも小惑星を探すことができます。
皆さんも是非トライしてみてください。

2001年1月1日 "冬の夜空の中心、すばる" 付近の小惑星 (緑色の印)
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冬の夜空の中心、頭上たかく昇った"すばる"(プレアデス星団)の近くにも、こんなにたくさんの小惑星が輝いています。 マス目の1目盛りは1度。



4.1 小惑星とは

小惑星とは、文字通りに「小さな惑星」のことです。 最大の小惑星はセレスで、その直径は910kmほどありますが、大部分の小惑星は直径が数10kmから数kmです。 そして、さらには数百mから数m程度のものも発見されています。

小惑星は、サイズが小さくなればなるほど、その数は多くなります。現在では、2万個近くの小惑星の軌道が正確に求められていますし、これに加えて数万個の小惑星については、一応、軌道が算出されています。観測はなされたけれども軌道はよく分からないものも入れると、20万個以上の小惑星をすでに観測しているのです。

見かけは小さいですが、数の上では太陽系の主役なのです。



最初に小惑星が発見されたのは、19世紀が始まった日(1801年1月1日)でした。 この日に、イタリアのシシリー島にあるパレルモ天文台での観測で発見されたのです。 そのために、シシリー島の女神の名前にちなんで「セレス」と名付けられました。

セレスは、火星と木星軌道の中間に発見されましたが、その後、似たような軌道にどんどん小惑星が発見されました。

火星と木星軌道の間に小惑星がたくさん分布しているところを、「小惑星帯」と呼んでいます。ほとんどの小惑星はこの小惑星帯にありますが、中には、木星軌道の外側や、火星軌道の内側にあるものもあります。特に火星軌道の内側にあるような小惑星は、地球にも接近する可能性があり、「スペースガード」の対象天体となっているのです。

2001年1月1日の小惑星の分布とCeresの軌道

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中心に太陽があり、Ceres以外の軌道は内側から水星、金星、地球、火星、木星である。


以前は、望遠鏡で小惑星を観測することだけでしたが、最近は、探査機が小惑星のそばまで行って、その写真を送ってくるようになりました。 小惑星の素顔は、あたかもジャガイモやサツマイモのような非常にいびつなものだったのです。

NASAの探査機が撮影した小惑星のクローズアップ

Jet Propulsion Laboratory, Pasadena, California のホームページより


この小さな世界はまだまだ謎に包まれています。これから、どのようなことが分かってくるのか、楽しみです。


4.2 発見から登録まで


ポケモンが、「ピチュー」→「ピカチュー」→「ライチュー」と進化するように、小惑星も成長(?)するたびに名前のかわる星です。 (ポケモンに馴染みがない方は、例えば、出世魚とも呼ばれるブリが、成長するにしたがって、「わかし」→「いなだ」→「わらさ」→「ぶり」と名前を変えることを思い浮かべてください。) 大空広しといえども、このように名前がどんどん変わっていく星はほかにありません。

成長のようすは次のようになります。

第1段階  パーソナル符号  <観測されたばかり>
発見者またはグループが独自に決めた整理用の名前で、新しい小惑星が発見されたときに付けられ、ふつうアルファベットと通し番号の組み合わせです。 アステロイド・キャッチャーB-612を使ったプロジェクトでは、7桁以内の英数字を使ってください。

例えば、4桁以内のアルファベットに3桁の通し番号の数字をつけるとよいでしょう。 アルファベットの部分は参加している皆さんが自由に選べます。 また、数字の部分は、発見した天体の通し番号とするのがよいと思います。 複数の写真に撮影された同一の天体については、同じものになります。
  例: BSGC001、BSGC002、BSGC003…とか、UFO800、UFO801、UFO802…など

第2段階  仮符号  <未確定小惑星>
小惑星センターが決めた整理用の名前。 軌道の形がまだ正確にわかっていない小惑星に付けられます。この段階の小惑星は未確定小惑星と呼ばれます。 仮符号を取得するには最低でも2夜以上の観測が必要です。
  例: 1998 RX25、2000 UV13 など

★仮符号の数字とアルファベットの意味はこちら

第3段階  登録番号  <確定小惑星>
小惑星センターが決めた登録番号。軌道の形が正確にわかっている小惑星に付けられます。登録番号が付いた小惑星は、確定小惑星とも呼ばれます。
  例: (1) 、(1862) など番号をカッコつきであらわす

第4段階  固有名  <確定小惑星>
発見者の命名提案などを受けて、小惑星センターが決めた固有の名前。 登録番号が付くと小惑星に名前をつけることができます。
  例: Ceres 、Apollo など

これでわかるように、整理用のパーソナル符号は発見者またはグループが自由に決められますが、仮符号以後はすべて小惑星センター(国際天文学連合=IAU)が決めるという約束になっていて、これらは世界共通の公式の名前となります。

また、最後の固有名も規則で小惑星センターが命名をすることになっています。 しかし、発見者が好きな名前を提案し、審査をへて特に問題がなければ希望どおりの名前で命名されるのが慣例になっているので、これは発見者の努力に報いるということでもあります。 まだ小惑星の発見が少ない頃は、主にギリシャ神話に登場する神々の名前が多かったのが、最近ではかなり風変わりな名前の小惑星も、ポツポツ見られるようになりました。

なお、固有名のつけられた小惑星は登録番号と並べて (1) Ceres 、(1862) Apollo などと記されることが多く、番号登録されても命名されていない小惑星の場合は、仮符号と並べて (17286) 2000 NB6 というようなあらわし方をすることがあります。


4.3 小惑星の見つけ方



「アステロイド・キャッチャー B-612」は、複数の画像を交互に表示(ブリンク)させることにより、小惑星彗星のように恒星の間を移動する天体の発見と、その天空上の位置(座標)の測定を容易におこなうことができるソフトウェアです。

必要になるのは、天空上の同じ場所を、時間をあけて撮影した2枚以上の画像ですが、 これは、インターネット経由やCD-ROMで取得します。 取得の仕方は、プロジェクトごとに異なりますので、確認してください。 画像の用意できましたら、「アステロイド・キャッチャー B-612」による小惑星捜索の準備完了です。 (アステロイド・キャッチャー B-612が入っているCD-ROMには練習用の画像も入っていますので、まずはそれを使って使い方をマスターしてください。)

小惑星は太陽の周りを公転しているので、地球から観測すると見かけ上は恒星の間をぬうように移動して見えます。 そこで、時間をおいて撮影した2枚以上の画像を、背景の恒星を基準に重ね合わせ、短い時間内に交互に表示(ブリンク)させるときわめて遠方にある恒星はその名前のように位置が変わらないのに対し、時間内に移動した小惑星は2枚の画像であればぴょこぴょこと行ったりきたりして動いて見えるのです。 また、3枚以上の画像があれば小惑星が背景になる星座内をしだいに移動していく様子を確認することも可能です。

このように「アステロイド・キャッチャー B-612」を使うと、恒星を基準にして複数の画像を重ね合わせ、それらをブリンクさせることによってたくさんの星の中に潜んでいる小惑星を簡単に見つけだすことができるのです。

移動天体の例



健康のため画面の見すぎに注意しましょう

小惑星 (1813) Imhotep と、2000 RJ72 の移動の様子。明るいほうが (1813) Imhotep です。 a はCD−ROMにある「m2350n1630-1.fts」、b は同じく「m2350n1630-2.fts」の画像の一部分です。 a と b を合成した下のブリンク画像(動画)では、2つの小惑星のほかにノイズも2つ見えます。

小惑星の見かけ上のうごきは、地球との距離や位置関係さらに撮影器材によって非常に小さい場合や、逆に非常に大きな場合もあります。 それぞれの画像の撮影間隔によっては移動天体として確認できないこともあります。上のサンプル画像に写っている2つの小惑星のうごきは平均的なのもです。

普通の惑星や小惑星などの動きは、下の図のように地球からみると西から東へ動いたり(順行=じゅんこう)、逆に東から西に動く(逆行=ぎゃっこう)こともあります。 また動きの方向が変わる前には、ほとんど止まって見える(留=りゅう)こともあります。

図でわかるように地球が小惑星を追い越すときに、地球と小惑星の距離がいちばん近く、ちょうど太陽と反対方向になりますが、これを衝(しょう)といいます。 衝のころの小惑星はいつも逆行しており、小惑星はちょうど満月のように太陽の光を全面で反射して明るくみえるようになっています。 いつもは暗くて見のがしやすい小惑星を発見するチャンスの時期が衝のころです。


【メモ】
ブリンク=blink は英語で「瞬く」とか「点滅する」いう意味で、2枚の画像を交互に表示させると、明るさの変わった星が点滅して見えるので変光星は文字どおりブリンクしているように見えます。このことから2枚の写真を交互に表示させることを単に「ブリンク」させるなどといいます。 しかし移動している天体は、点滅というより飛び跳ねて見えるので、小惑星や彗星のような場合は「ジャンプ」というのが正しい表現かも知れません。 また同じ方法で数年以上をへだてて撮った写真を調べると、動かない星といわれている恒星も実はそれぞれがほんの少しづつ位置を変えていることもわかります。



4.4 見つかるのは小惑星だけとは限らない



天上は一定不変と考えられていたのは大昔のこと。今では宇宙が休みなく活動していると考えるのは常識です。 美星スペースガードセンターの観測で得られた膨大な宇宙の画像にも『いつも何らかの動きが記録されている』というのもまた当然のことです。

この貴重なデータの宝庫の中でもとりわけその変化がわかりやすい天体として、小惑星以外に、彗星、超新星、変光星などがあります。


彗星は小惑星と同じように動きのある天体で、たいていは遠くの銀河のようにぼんやりとかすんだような外観をしています。 中でも太陽に近づいて明るくなったときには「ほうき星」の名前のとおり長い尾をたなびかせて星空を遊泳します。 ダウンロードした画像の中でぼんやりした形状の移動天体を見つけたら、まず彗星と疑ってみてください。 ただし、すでに発見されている彗星であったり、冷却CCDカメラのノイズである可能性もあるので、ここでもチェックは欠かせません。 既知の彗星の予報位置は天文雑誌などからでも入手できますが、小惑星センターのホームページでも情報の入手は可能です。

図:2000年11月4日(世界時) オリオン座を北西方向に向かう約14〜15等級のLINEAR彗星(C/2000 U5)の動画。 南の方向に向けて彗星特有の尾がかすかに見られます。(画面の上が北)

超新星は恒星が進化の最終段階で大爆発をおこす現象ですが、ひとつの銀河の中では平均して数百年に1度というとても珍しい現象です。 事実われわれの銀河系では1604年にへびつかい座に出現したケプラーの超新星とよばれている星以後、超新星はあらわれていません。 しかしパトロール写真の中にはそれこそ無数といってよいほどの遠くの銀河が写っています。 ひとつひとつの銀河での出現は稀(まれ)であっても、たくさんの銀河をいつも注意してみていれば、いつかは恒星の大爆発を世界ではじめて見ることができるかもしれません。 チェックの方法は簡単で、過去に撮影した同じ銀河の画像とを見比べて銀河の中あるいはごく近くに明るい星が出現していないかを調べます。 過去の銀河の画像は、たとえば http://dss.mtk.nao.ac.jp/ でも調べることが可能です。

青木昌勝さん(富山市)が発見した超新星 SN1997dq の画像
青木さんのホームページ(http://www.tam.ne.jp/aoki/pages/novamain.html)より。

変光星はその名前のとおり明るさの変わる恒星です。 明るさの変わる原因は、星自体が膨れたり縮んだりしている場合や、2つ以上の恒星がお互いの周りを回りあっていて地球から見ると日食のように見えている場合などさまざまで、明るさの変わりかたや、その周期などもいろいろです。 一晩のうちに大きく変光するものはあまり多くはないので、連続して撮影した画像から変光星を見つけるのは簡単ではありませんが、何日間かをへだてた画像をていねいに見比べれば、まだ知られていない変光星を発見することができるかも知れません。

上の2枚の画像は長野県の飯田慎さんが発見した、「おおぐま座ER」とよばれている変光星で(図の中の a )、10月21日には b星とほぼ同じ明るさでしたが、11月6日には b星よりも明るくなっているのがわかります。 なお、左図を斜めに横切るのは人工衛星の軌跡(きせき)です。時刻はいずれも世界時です。

4.5 ノイズに注意

これまでのフィルムに替わって最近はデジカメ(デジタルカメラ)が流行です。 冷却CCDカメラもデジカメも同じようにCCDを使って画像を記録しますが、天体を撮るのにわざわざ「冷却CCD」を使う理由は、CCDは長い時間の露出を行うと電気的な雑音(ノイズ)が多くなるのですが、温度を下げるとノイズも減るという性質のためです。 しかし冷やすことによってノイズは減りますが完全になくなりはしません。

また、CCDはピクセル(画素)とよばれる小さな受光器が、碁盤の目のようにぎっしり並んだ構造で、これが集まって1つの画像を作っています。 例えばCD−ROMに収められたサンプル画像は約419万個ものピクセルの集まりです。 そしてこのたくさんのピクセルの中に、他よりもずっと光に反応してしまうものや、反対に光をまったく感じないものもほんのわずかですが含まれていて、これらはやはり広い意味でのノイズということになります。

ノイズは画像を調べるときにはたいへん邪魔になるもので、時にはあたかも小惑星や彗星のように見えることもありますので、注意が必要です。 本物の天体の写り方になじんで、ノイズにだまされないようにしましょう


 矢印の先がノイズ(動画になっています)