6. AstCatの使い方 2 −ブリンクと測定−



6.1 ブリンク 

読み込んだ画像と星表との対応が正常に終了すれば、「画像1」と同じ領域を撮影した「画像2」以下の読み込みをおこないます。 「画像2」以降は、「画像1」との位置合わせが自動的に行われます。 用意した複数の画像を順に全部読み込んだら「ブリンク」ボタン をクリックして「ブリンク画面」に移ります。 いよいよ小惑星の探索開始です。

ブリンク画面


「自動ブリンク」ボタン  をクリックすることにより、ブリンク(読み込んだすべての画像を連続的に表示)が始まります。 ブリンク速度は ボタン右側のアップダウンボタン の操作によって調節できます。 また、「手動ブリンク」ボタン をクリックするごとに、画像が順次表示されるので好みにより使い分けが可能です。

ブリンクしている画像をよく見て、動いている天体を探してください。 このときに、本物の小惑星かそれともノイズかをよくみきわめてください。 ノイズについては、4.5節を参考にしてください。

ブリンクをするときに、画像を拡大した方が探しやすい場合もあります。 画像の拡大縮小には、次のボタンを使ってください。

全体表示・・・ 画像全体が表示されます(最初はこの状態で表示されます)。



原寸表示・・・CCDの1ピクセルが画面の1ピクセルの原寸で表示されます。



拡大率%・・・ 画像を拡大、縮小して表示します。右側にあるコンボリストから拡大率を選択してから、このボタンをクリックしますが、 拡大率はキーボードからの直接入力も可能です。

【注意】 画像のピクセル数や、使用されるパーソナルコンピュータの仕様により拡大率が制限されます。


画像を拡大すると、画像がディスプレィからはみだしてしまう場合もありますが、そのときは次のいずれかの方法でスクロールします。
 (1)スクロールバーを直接クリックかドラックする。
 (2)スペースキーを押す。(順次画面が移動する。)
 (3)左上の小さなグリッド内を直接クリックする。(このグリッドは、画面分割状況と現在位置を表している。)
 (4)[↑]、[↓]、[→]、[←]キーを押す。


ブリンクの画面にも「画像の調整」ボタンがあります。 暗い天体を探すときなど、画像をいろいろ調整しながら探してください。


【参考】 読み込まれている画像の中でブリンクさせるものを選択することができます。 次に示すボタンをクリックして、画像を選択してください。



ブリンク画面ではマウスカーソル(矢印)の移動により、カーソルの指し示す位置が赤経・赤緯の値として画面の最上段に表示されます。最初のうちはこの表示を見ながらカーソルをいろいろ動かしてみて、画像のスケールがどれくらいになっているのか確認してみましょう。

【参考】天体の見かけの大きさや相互の距離などは、角度を単位にしてあらわします。
  例:
    地平線から天頂(頭の真上)まで    90度
        北斗七星のさしわたし 約 15度
    オリオン座三つ星のさしわたし 約 2.5度
       太陽と月の見かけの直径 約 0.5度(=30分)
     小惑星の1日あたりの移動量 約 0.2度(=12分) ←衝付近での平均的な値
         木星の見かけの直径 約 0.7分(=42秒)
        冥王星の見かけの直径 約 0.1秒

6.2 便利な機能

「アステロイド・キャッチャー B-612」には、小惑星を探すための便利な機能があります。

◆既知小惑星の位置を表示する機能 
「国際小惑星監視プロジェクト」 では、この機能は働きません。
その理由は、既知小惑星の発見も楽しんでいただくためです。
ブリンク画面に移った際、既知の小惑星の予報が自動的に計算されます。 もし、画像内に既知の小惑星があれば、その予報位置が赤い枠で、小惑星の名前と予報の明るさ(等級)が赤い字で表示されます。

既知小惑星のサーチは、のボタンをクリックすることでも行われます。 また、をクリックすると、 既知小惑星サーチでマークされている小惑星の詳しい情報画面が表示されます。

【注意:1】 小惑星の名前は次のように表示されます。
  名前の表示例: (1862) → 1862番目に番号登録された小惑星  
         2000UV13 → 2000 UV13 という仮符号で呼ばれている小惑星  
         3040P-L  → 3040 P-L という仮符号で呼ばれている小惑星  
         5778T-3  → 5778 T-3 という仮符号で呼ばれている小惑星  
【注意:2】 小惑星の予報位置の精度について:
番号登録された小惑星の予報位置の精度は非常に高く、通常は角度で数秒以内です。 しかし、まだ仮符号で呼ばれている小惑星の場合は、軌道の形などが正確に求められていないため、必ずしも予報どおりの場所にいるとは限りません。またその確かさは個々の小惑星により違うので、注意が必要です。 小惑星に限らず、太陽系内の天体は相互にかかる引力の影響を受け、たえずその軌道が微妙に変化しています(摂動)。 このため小惑星の軌道データも、時間がたつと予報位置の計算精度が悪くなっていきます。


◆移動天体をサーチする機能 

このボタンをクリックすると、移動天体(小惑星や彗星)と思われる星に青色のマークが付きます。 マークが付いたものが本当に天体であるかを判断するのは皆さんです。 また、移動天体なのにこの機能で見つけられない場合もあります。 この機能は参考にする程度として、あくまでも皆さんの目で探してください。 なお、この機能は画像が2枚以上読み込まれている場合に働きます。


◆恒星について 

をクリックすると、画像の中で星であると認識された像に赤色のマークが付きます。
をクリックすると、星と認識された像のうち、星表と対応ができたものにマークが付きます。 認識星と星表の対応がきちんとできたもの(整約星)には赤色のマークが、 認識星と星表の差が大きいもの(棄却星)は青色のマークが付けられます。


◆マークの消去 

をクリックすると、画像に付けられたマークが全て消されます。



6.3 位置測定

バックの恒星に対して移動する天体が見つかり、それを報告する必要がある場合には、各画像ごとにその位置を測定します。 位置を測定するには、ブリンクの画面において、測定する天体の中心付近にマウスポインタを合わせ、クリックします。 すると、測定結果が画面上部に瞬時に表示されます(次の図)。



2行表示のうち、下段が最後にクリックして測った測定データで、上段はその直前の測定値です。 表示される内容は次のとおりです。
左から:
  測定の通し番号
  観測年月日(世界時。 時分秒は1日を単位とした小数に変換されています。)
  赤経 (時分秒。 2000年分点)
  赤緯 (度分秒。 2000年分点)
  グループ名
  光度等級 (実視等級を表すVを付記)
  天文台コード
  標準偏差など

データ右端に表示される  (0.09 0.13) 21 などの数値はソフト内部で星の認識を色々と変えてみた場合の変位(標準偏差)とその回数を表しています。

輝度表について 

輝度表とは、冷却CCDカメラに記録された天体や、その周辺の空の明るさの分布図です。 輝度表は、次の場合に使います。

(1) 天体が暗くて淡いときなどに、天体にマウスを合わせてクリックしても反応しない(赤い枠が出ない=測定できない)場合があります。このような星の位置を測定するとき。
(2) 星の像をつくるピクセルの詳しい輝度を知りたい場合や、手動で位置を指定したい場合。

輝度表の出し方は、(1)の場合には、目的天体の周辺をマウスの右ボタンでドラッグして青い枠を表示し(次の図)、右ボタンを離すと、選択した範囲を中心にした輝度表の画面に切り替わります。 (2)の場合には、星をクリックしてからボタンをクリックします。





次の図が輝度表の画面です。 マス目の中の数字が各ピクセルごとに当たった光の量をあらわしており、大きな数字の集まっている場所が明るい星とその周辺部分です。

輝度表の表示画面


輝度表の画面が表示されたら、星として認識したい(=測定したい)範囲を、マウスの左ボタンを押しながらドラッグします。 ドラッグすると、その部分が青色になり、輝度値の前にアスタリスク(*)が付きます(次の図)。 この領域が星として選択した部分になります。 ドラッグが終了すると即座に星の中心位置が計算され、マトリックスの上部に表示されます。



最初にドラッグすると、長方形の領域が選択されますが、ピクセルごとの微調整は左ボタンをクリックすることでおこないます(クリックごとに選択/非選択が切り替わります)。 クリックするたびに、星の位置が計算されて、上部に表示されます。

また、輝度表上で星を自動認識する機能もあります。 星の中心付近にカーソルをもっていって、マウスの右ボタンをクリックしてください。 この場合も、同時に星の位置の計測がなされます。

ピクセルの選択をすべてキャンセルするときには、クリアボタンを押します。


以上のようにして、ブリンク画面または輝度表で、納得のいくまで測定します。 そしてその測定値でよいということになったら、結果をファイルに書き出すことになります。



6.4 結果の出力 

測定した結果をテキストファイルとして書き出すには、ブリンク画面か輝度表の画面の出力ボタン をクリックします。 画面はつぎのように変わります。

観測データの出力画面



画面の中央の細長い四角の枠の中に、最後に計測されたデータが表示されます。 このデータがファイルに出力されることになります。


◆天体の種類の選択

まず、天体の種類である未確定小惑星、確定小惑星、彗星のいずれかを選択してください。

ただし、発見した天体が何であるかを知ることは、最初は難しいかもしれません。 天体を調べるときに、6.2節で説明しました既知小惑星を表示する機能が役に立ちます。 そして、より最新のデータと照合したい場合には、7章で説明する方法で試みてください。 調べてみた結果、既知の天体と照合されなければ、新発見の天体である可能性があります。 もし、このようなことを調べるのが難しい場合には、未確定小惑星を選択して、次に示しますようなパーソナル符号を天体名として記入して構いません。
「国際小惑星監視プロジェクト」 の場合には、既知の天体との照合をしなくても結構です。 発見した移動天体については、未確定小惑星を選択して、下記のパーソナル符号を付けてください。 (もし、可能ならば、もちろん、既知天体との照合をしてもらって構いません。)

◆天体名の入力

次に、天体名を入力します。 天体名は、選択した天体の種類に応じて決められたフォーマットで入力します。



上の図は、未確定小惑星の場合です。 この例では、発見した天体にパーソナル符号として決めた "SCL001" という名前を付けて出力しようとしています。 ここで "SCL" の部分は報告する人が任意に決められます。 また、001という番号の部分は、発見した天体の通し番号です。 このようなパーソナル番号を付けるのは、発見した天体が既知の天体と確認できなかった場合です。 詳しくは、4.2節を見てください。

発見した天体が仮符号のついている小惑星(未確定小惑星)であった場合には、その仮符号を入力してください。 なお、例えば小惑星2001 AS の場合には 01AS と省略して入力でき、入力後に[ENTER]キーを押すと正式のフォーマットに変換されます。

発見した天体が、登録番号が付いた確定小惑星の時は、その登録番号を 1とか2382などのように入力してください。 もし発見した天体が彗星の場合は、IAUフォーマットの1カラム目から名前を正確に入力します。 正式のフォーマットとは小惑星センターがデータ管理のために用いている書式(フォーマット)で、コンピュータ内部で扱いやすいような特別のスタイルがとられています。

【注】 天体名の欄は入力を終えたら、念のため[ENTER]キーを押してください。 [ENTER]キーを押すと、表示されている計測データの先頭の名称が入力したものに変わります。


◆観測ファイル名の入力

天体名の記入が終わったら、観測ファイル名を入力してください。 ファイル名は自分で分かるものなら何でも構いません。 なお、ファイルは、フォルダを指定しなければ、 で指定したフォルダ内に出力されます。 または、「C:\NEA\ObsData\AstObs.txt」のようにフルパスでの指定することもできます。

【注】 この「C:\NEA\ObsData\AstObs.txt」というファイルは、測定したデータを出力したサンプルのファイルです。

最後に、「OK」ボタン をクリックすると指定した観測ファイルに出力されます。 この場合、観測ファイルがすでに存在すればそのファイルにデータが追加されます。 観測ファイルがなければ、新規に作成されます。。


【測定結果の例 ・・・ IAUフォーマット】

  確定小惑星 ------------
  02382         C2000 06 19.51343 16 45 18.68 -07 01 35.3                      300
  02382         C2000 06 19.51860 16 45 18.36 -07 01 28.6                      300

  未確定小惑星 ----------
       J87K00L  C2000 06 19.50797 15 32 50.88 -19 36 34.3                      300
       J87K00L  C2000 06 19.51601 15 32 50.25 -19 36 45.7                      300
       AB001  * C2000 06 04.66535 18 28 01.17 -10 47 47.9          17.3 V      300
       AB001    C2000 06 04.66762 18 28 00.11 -10 47 49.7                      300

  周期彗星 --------------
  0047P         C2000 06 04.74766 20 50 14.30 -34 58 18.1          15.6 T      300
  0047P         C2000 06 04.75455 20 50 14.41 -34 58 19.6                      300

  非周期彗星 ------------
      CJ99S040  C2000 06 04.76306 02 08 06.90 +33 05 53.7                      300
      CJ99S040  C2000 06 04.76645 02 08 07.10 +33 05 56.4                      300
      CJ99S040  C2000 06 04.76747 02 08 07.07 +33 05 56.7                      300
IAUフォーマットは、上の例のように1行が半角英数で80桁のテキストファイルですが、本ソフトウェアでの出力は、81桁目以降に 『天体の画像上のx,y座標』と、『画像のファイル名』が追加され、報告には出力されたままのデータを使っていただきます。
80桁のデータの並びは、左からつぎのようになります。

 (1) 天体名
 (2) 発見した小惑星には、最初の観測の13カラム目にアスタリスク(*印)
 (3) 撮影(観測)年月日.....(時刻は日の小数であらわす)。
 (4) 赤経と赤緯
 (5) 明るさ(等級)
 (6) 等級の区分(CCDの場合はV)
 (7) 天文台コード