7. 天体の同定

    〜応用編〜



ブリンクでうまく移動する天体のイメージが見つかれば、それが新天体なのか、あるいはすでに知られている天体なのか、是非、確認をしてみましょう。

アステロイド・キャッチャー B-612にも、既知の小惑星をマークする機能はあります(6.2節参照)。 しかし、毎日のように新しい小惑星が発見されていますので、最新の情報と照らし合わせてみる必要があります。 ここでは、国際天文学連合の小惑星センターのホームページを利用する方法について説明します。

「国際小惑星監視プロジェクト」 の場合には、既知の天体であるかどうかを調べなくても構いません。
まず最初に、見つけた移動天体の位置を求めます。 これは、6.3節を参考にしてください。 ここでの作業のためには、あまり細かい精度で位置を求める必要はありません。 角度で1分くらいの精度があれば十分で、赤経 oo時oo.o分、赤緯oo度oo分というように測定された天体の位置をメモにとっておきます。

【参考】 天体の位置のあらわしかたと精度
ひと口に天体の位置といっても、その値の精度(確かさ)によっていろいろなあらわし方があります。 また天体の位置を求める場合、それはその利用目的にふさわしい精度でなければなりません。 たとえばスペースシャトルが1等星ほどの明るさで見えるならば、「南西の空の低いところから頭の真上ちかくを通って。。。」というラフな表現でもシャトルを肉眼で見つけるには十分かも知れません。 しかし小惑星を見つけ、それを報告するためには角度の0.1秒という精度で位置を決める(測る)ことが要求されています。 地球から見た満月の大きさは直径約0.5度、つまり1,800秒角ほどですから0.1秒角の精度で位置を決めるということは、満月の大きさの18,000分の1の精度で位置を測らなくてはいけないわけです。
  測定精度による位置のあらわし方の例:

                          α            δ
   0.1秒角の精度  13h30m42.84s  −22゜49'18.2"
     1秒角の精度  13h30m42.8s   −22゜49'18"
     1分角の精度  13h30.7m      −22゜49'
   0.1度角の精度  13h31m        −22.8゜
α13h30m42.84s、δ-22゜49'18.2"は、赤経13時30分42.84秒、赤緯 −22度49分18.2秒と同じです。

さて、メモ書きした概略の時刻と赤経・赤緯のデータをもとに、最新のデータとの突合せをしてみましょう。

ここでは説明のため、観測時刻は2000年10月14.76日(UT)、赤経22h53.7m、赤緯-15゜09'に18.5等級の移動する天体があったと仮定して、この天体が既知の天体かどうかを確認してみましょう。

最新のデータはIAU小惑星センター(Minor Planet Center)にあります。 インターネットのブラウザを立ち上げ、次のURLへアクセスします。
http://cfaps8.harvard.edu/~cgi/checksn.com

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すると上図のページが開かれますので、赤色で示したようにメモのデータを入力し、最後に「Produce list」ボタンをクリックします。

数秒後に照合結果が次のとおり表示されました。

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これによると:
『入力した時刻と位置付近には "2000 QX136" という17.8等級の小惑星がいて、この小惑星は入力位置から西に9.6分角、南に1.4分角にいて、1時間あたりの移動方向は西に0.2分角、南北方向の動きはナシ』
というものです。 明るさや移動する方向が似ており、しかも位置が角度で0.1度以内程度に合っているという場合は、残念ながら見つけた天体は新発見でない可能性が高いでしょう。 反対に上記のダミーのデータのように、入力位置の近くにそれらしい星がいなければ、それは新天体である可能性が非常に高いと言えます。

この期におよんでまだ「可能性が。。」と弱気なことしか書けないのは、いまチェックしているこの瞬間にも、ドコかの誰かが同じ天体を発見し、ディズニー版チェシャ猫のようなにんまりとした目で()、着々と報告のメールを仕上げている最中かも知れないからです。

そう、今や天体発見レースの火ぶたは切って落とされました。コトは急を要するのです!!