12.小惑星の豆知識


そら豆


「Asteroid」と「Minor Planet」、どう違うの?

小惑星のことを英語で "Asteroid" または "Minor Planet" といいます。 前者は19世紀はじめの頃に、「恒星のようなもの」という意味で使われたことに由来します。 これは望遠鏡を使って見ても点にしかみえないところからきています。 後者は単純に「小さな惑星」という意味ですね。 どちらも正しい呼び方ですが、イギリスの天文学者の D.J. Asher博士によると、『"Asteroid"と呼ぶ天文学者のほうが、やや多いのでは。。。』とのことです。


小惑星の分布...どこにいるのか?

小惑星は、火星と木星の間の小惑星帯と呼ばれる領域にその大部分が存在しています。 しかし、最近では、火星の軌道の内側に入り込むような小惑星が沢山発見されてきています。 これらは、NEO (Near Earth Object) とも呼ばれ、地球にも接近する可能性があるものです。 また、冥王星軌道付近にも沢山の小天体が発見されるようになりました。 こちらは、エッジワース・カイパーベルト天体と呼ばれています。 このように、小惑星は太陽系全体にわたって、存在しているのです。


軌道の計算

1801年1月1日は19世紀のスタートとなった日ですが、ちょうどこの日におうし座で発見されたのが最初の小惑星 (1) Ceres =セレス です。 しかし、この見つかったばかりの新天体はすぐに行方不明になってしまいました。 このときドイツの有名な天文学者で数学者のガウス(C. F. Gauss, 1777-1855)が、発見の頃の何日間かに観測された位置を使って軌道を計算しました。 約1年後の1801年12月31日、ガウスの計算結果から導かれる予想位置にしたがって、この天体はおとめ座の中で再び捉(とら)えられ、初めてこの天体が太陽の周りを回る新しい惑星であることが確認されました(それは、それまで知られていたどの惑星よりずっと小さかったのですが)。 太陽の周りを公転する天体の地球からの見かけの位置を、少なくても3晩以上観測するとその軌道を計算することができますが、この計算方法を開発し、はじめて実地に応用したのが、若き日の天才数学者ガウスというわけです。


同定(どうてい)



せっかく苦労して発見した小惑星も、観測が少ないと正確な軌道が分からないまま、行方不明になってしまうことがよくあります。 また、何年かの後にドコかの天文台が同じ星を偶然に観測して「新天体」として報告することもよくあります。 そうなると本当は同じ1つの星なのに、2回あるいはそれ以上も新発見されて、そのたびに整理用に仮符号がつけられることになるわけですね。 同じようにアステロイド・キャッチャー B-612を用いたプロジェクトで見つかった天体も、実は「何年か前に見つかったけれど行方不明になっていたものだった」ということもあるわけです。 そうしていつの日か精度の高い軌道が計算されて、それぞれの仮符号で呼ばれていた星が同じ小惑星だったことが確認されると、2000 SD7 = 1997 YW18 = 1999 JY85 のようにイコール記号を使って書き表されます。 このように「いくつもの仮符号で呼ばれている星が同一の小惑星である」ことを確認することを小惑星の同定、または同定計算といいます。


発見者は誰? ・・・・・ 「みた」と「みつけた」の違い

上の「同定」の説明の中で例としてあげた「2000 SD7 = 1997 YW18 = 1999 JY85」ですが、発見の西暦年の順番が不ぞろいなのに気がつきましたか?  「小惑星は1つの星が何回も発見されることがある」ということを説明しましたが、それでは発見者も複数名いることになりますね。 実は正式にIAU(国際天文学連合)で発見者と認められるのは、たったの1人(または1グループ)だけです。 その認定の基準は、「最初に楕円(だえん)軌道を計算できたときの発見者」に最終的な栄誉が与えられるのです。 例えば1晩や2晩だけ観測しても楕円軌道は計算できませんし、それでは将来の観測のための位置予報も計算することは不可能で、これは楕円軌道が計算されてはじめて可能になります。 つまり見つけた星が太陽系の正式のメンバーであることを確認するためには、軌道を知ることが絶対条件になっているので、このため「最初に楕円(だえん)軌道を・・・」となるのです。 「2000 SD7 = .........」の例では、イコールで結ばれた先頭の 2000 SD7 の発見者だけが公式に "みつけた"ことになり、1997 YW18 他の発見者は "みただけ" ということになります。


特異小惑星



小惑星のほとんどは火星と木星の軌道の間にあたる空間を、ほぼ円形に近い軌道で公転していますが、中には細長い楕円(だえん)形の軌道で、火星や地球の軌道までも横切って太陽の近くまでやってくるものもあります。 また反対に木星の軌道に近いところや、それよりはるかに遠い冥王星の外側を回る小惑星もありますが、これらの変り種をまとめて『特異小惑星』と呼んでいます。 前者の中には地球に大接近するものもあって、これらは特にNEA(Near Earth Asteroid=地球近傍小惑星)、あるいはNEO(Near Earth Object=地球近傍天体)といわれています。


図は 2000 UV13 の発見時における各惑星の軌道上の位置。 (作図: Dr. D.J. Asher)  2000 UV13の軌道は、地球の軌道に対して約32度傾いており、太陽を通る横線より下の部分は、地球軌道のある平面より下(南)になります。

2000年10月21日 BSGCで発見された 2000 UV13 は火星の軌道を横切り、地球よりも太陽に接近するアポロタイプと呼ばれる特異小惑星です。 その直径は5〜12Kmと予想され、約6,500万年前にユカタン半島に激突して恐竜など多くの種を絶滅に追い込んだとされる天体と同サイズの小惑星で、地球の軌道とクロスするような軌道上を公転しているのでたいへん注目されています。


おおぐま座を行く特異小惑星 2000 UV13 (撮影:美星スペースガードセンター)  [動画]


小惑星探査

ちょっと前まではあまり目立たなかった小惑星ですが、最近になって急に注目を浴びてきました。 探査機が小惑星のそばまで行って、その素顔を撮影して地球に送ってくるようになったのです。 まず、ガリレオ探査機が、1991年と1993年にそれぞれガスプラとイダという小惑星に接近して、写真を送ってきました。 その後、ニア探査機が1997年にマチルダという小惑星に接近し、そして2000年初頭には小惑星エロスのまわりをまわる軌道に投入され、エロスの詳しい観測を行っています。 そして、2002年ないし2003年には、日本も小惑星に向けて探査機を打ち上げる予定です。 これはMUSES-C(ミューゼスC)ミッションと呼ばれており、小惑星まで行ってその表面物質を採取し地球に持ち帰るという画期的なミッションです。 これらのミッションを通じて、小惑星の本当の姿がどんどん明らかになっていくでしょう。