日本スペースガード協会の発足にあたって

                        日本スペースガード協会                               会長   磯部 三     

 日本スペースガード協会 に発会にあたり多くの方々 の献身的な努力により、日 本スペースガード協会を発 足することができたこと は、大きな喜びであるとと もに、小惑星の地球衝突問 題に取り組む重要な第一歩 を踏み出したとの感を深く しております。

 小惑星が地球に衝突する と、直径1kmもの大きなも のでは人類絶滅もありえ、 直径100mでは、日本全体が 壊滅する危険性もありま す。しかし、その衝突確率 からみて、あらゆる事に優 先してこの問題を解決しなければならない問題と受け取るべきでもありません。危 険回避のレベルはそれにかかるコストを十分に考慮するべきです。安全とコストの バランスが重要です。

 本協会は小惑星の地球衝突問題を世界の特に日本の多くの方々により正しく理解 してもらい、多くの直接(寄付や観測参加等)、間接(賛成の発言等)の支援を 得、小惑星の軌道決定(観測、計算等)、衝突確率の決定、被害レベルの推定(地 震、津波、ガスや塵の影響等)、衝突回避の可能性の検討、等の研究・調査活動を 支援する事を目的としています。これらはいずれもグローバルな問題であるので、 国際的な協力で進められるべきもので、各国の同様な協会や財団や国際スペース・ ガード財団と密接な連携の下に推進するべきである事は当然のことであります。

 不幸にして、近い将来に小惑星が衝突軌道で地球に近ずいてくるという可能性は あります。そのような時にも、正しい情報と正しい認識があれば、パニックにはな らないでしょう。そのためには、本協会が中心となって、人々が正しい理解を持つ ように前もって十分な教育活動をしておく必要があります。

天文学者や物理学者のような純粋科学者は自然の解明を目的として仕事をしてい ます。その研究段階では研究結果が人類の活動に直接貢献する事を目的としていま せん。しかし、その結果として、人類にとって重要なものであれば、それを正しく 応用するための引き金となる役目をしなければなりません。原子核融合反応の研究 が悪い方向に進んで、原子爆弾になってしまいました。小惑星の地球衝突を回避す るための軌道変更の手段は逆の使い方をすれば、地球の特定の地域に小惑星を衝突 させる兵器にすることも可能です。これは国際的協力によって今回は避けなければ なりません。

日本スペースガード協会は、このような大きな目的をもって発足いたしますが、現 在のところ数人のわずかな会員と支援の方で出発しています。しかし、皆様のご理 解とご支援によって、会員数においても研究面においても、それを支える資金面に おいても格段の発展をとげ、人類にとっての重大な小惑星の地球衝突問題に大きく 貢献できれば幸いであり、又、その方向に向かって皆様とともに努力したいと思い ます。