協会が発足して以来会員数も徐々に増大して250名を越えました。会報も本号で3回出され、研究会もスタートしています。当協会のことについては多くのマスコミが取り上げて下さり、地球衝突小惑星問題についてかなり多くの人々が見聞きしていただけたと思います。ところで協会の目標は入会パンフレットに書かれていますが、もう少し具体的な方向性や活動についての議論を、会員の間で行う必要があるのではないかと思います。
 そこで現在、私が考えていることを述べてみます(これは数人の運営委員との間で話をしていることではありますが)。ぜひ会員の皆様の率直なご意見、ご提案をお聞きしたいと思います。

1.JSGAの研究目標(活動目標)

 a.過去の衝突の調査
  ア.地球上のクレータ
  イ.月面上のクレータ
  ウ.惑星上のクレータ
  エ.小惑星上のクレータ

 b.衝突による災害
  ア.インパクト実験
  イ.気候変動(低温化と高温化)
  ウ.津波の影響
  エ.大気による減速効果
  オ.小惑星の性質(質量、形状、
    組成、組成分布、欠け目)
 c.NEOの観測
  ア.地上の観測(a>1km)
  イ.月面・スペース観測(a>100m)
  ウ.彗星観測
  エ.データ・センター
 d.衝突回避
  ア.50年以上の警告時間
  イ.1年以上の警告時間
  ウ.1年以下の警告時間
 e.普及活動
  ア.会報
  イ.講演会
  ウ.マスコミ等への対応
  エ.ホーム・ページ
  
2.研究の進め方

 a.理想的なシステム
1.a.…1.e.までを含む全研究を進める10講座程度の研究所
 b.当面JSGAで行わない研究
   50年以上の警告時間のものを中心と考える。この場合、発見後、研究を始めて
   十分に間に合う。警告時間の短いものでは安全とコストの比較検討が不可欠で
   ある。
 c.個々の研究機関に依存する研究
1.b.オ.を除く1.a.と1.b.の項目は個々の研究機関で進める。研究費の補助などの
   活動が必要である。
 d.NEOの観測
次のようなストラテジーを考える。
  ア.直径1km以上の小惑星
    国際的な協力の下に、世界中に10台程度のNEO観測望遠鏡を実現するため、
    日本が北半球と南半球(オーストラリア)に各1台ずつ口径1.5mの専用望遠
    鏡を建設する。
  イ.直径100m以上の小惑星
    2020年代以降の月面・スペース定常観測を目指して、早い段階でスタディ・
    グループを立ち上 げる。
  ウ.彗星観測
    突然出現する長周期彗星のために、既存天文用望遠鏡を使った観測体制を構
    築する。
  エ.データ・センター
    膨大なデータを管理しながら、次の追跡観測のためのデータを提供するセン
    ターをアメリカ(既存)、ヨーロッパ、日本に構築し、リンクさせる。
  オ.小惑星の物理観測
 地上・スペースを使っての観測を組織化するチームを作る。
 e.普及活動
多様な活動ができる人材を養成する。そのためのチームを構築する。

3.NEO観測体制

1.望遠鏡
 A.赤道帯液体鏡固定望遠鏡
 目的 本望遠鏡は赤道帯に設置する固定望遠鏡で、大口径を低価格で実現するため
    に液体鏡にする。月面望遠鏡で観測しようとしている直径の小さなNEO
    (〜100m)がどの程度まで検出できるかを調べる上で重要である。
望遠鏡 口径3.5m 水銀鏡
 鏡筒の回転により水銀長面を放物面を作る
 焦点距離  14m 合成焦点距離  6m
 焦点タイプ リッチクレチアン
 視野  1゜以上
CCD  shot image and drift scan for debris and NEO
 モザイク  2列×4個 1CCD:4000×4000 pixels
 冷却  100゜K
サイト 赤道帯(インドネシア:バンドン又は他の候補地)

 B.高精度望遠鏡(南半球と北半球2台)
   目的  本望遠鏡は直径0.5km以上のNEOの系統的な掃天を目的としたもので
       ある。NEOは南天と北天を移動するので、効果的な軌道決定のために
       は南半球と北半球の2台の望遠鏡が必要である。
望遠鏡 口径2.0m 視野回転装置付き経緯儀式望遠鏡
 焦点距離  4.0m
 焦点タイプ 直焦点
 視野  2゜以上
CCD  shot image and drift scan for debris and NEO
 モザイク  2列×8個 1CCD:4000×4000 pixels
 冷却  100゜K
サイト オーストラリア(クーナ・パラブラン)と
 日本(木曽又は美星町)又はインド(ヒマラヤ)

2.月面望遠鏡
  目的  直径100m以上(1000km直径程度の範囲が壊滅)のNEOの全検出の
      ために必要である。
  当面の作業 月面基地建設と平行して、月面望遠鏡実現のための調査・研究を進
      め、2000年代の早い時期のテストミッションの実現を行う。そのため
      のチーム編成が必要である。

3.データ・センター
  目的  NEOを検出するだけではなく、それらを追跡して見失わない ように
      しなければならない。さらに効果的な追跡観測のための観測可能時間帯
      の情報が必要である。ヨーロッパやアメリカに設置されるデータ・セン
      ターと常に密接にリンクし、観測者への、又観測者からのデータの保存、
      転送をしなければならない。
  コンピュータ 高速、大容量コンピュータとその高速国際回線が必要である。
      しかし、既存の研究所に外部からのアクセスにFire Wallがかかってい
      ないスーパーコンピュータがあればそれを使用することも可能である。

4.NEOの物理観測
  目的 既存の望遠鏡を使っての観測を行う。そのための他機関の研究者に対する
     サービス・コーディネイトの作業が必要である。これにより、NEOの物
     理的性質を有効に求めることが可能になる。

5.普及活動
  目的 NEOの状況がどのようになっているかを知ってもらうことは重要である。
     そうでなければ、事件が起こらなければ人々は無視し、事件が起こればパ
     ニックになる。慎重で着実な普及活動を継続することにより、これらの困
     難を軽減できる。

6.体制



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