Comet Hale-Bopp (ヘール・ボップ彗星) 撮影データ

撮 影  : 渡辺文雄(長野県上田市)
撮影日時 : 1997年3月20日 04:25:18〜5分露出
撮影地  : 鳥居峠
光学系  : 300mm F2.8 望遠レンズ
架 台  : 高橋製作所 NJP型赤道儀
追 尾  : 恒星時追尾
フィルム : コダック ローヤルゴールド 400(ネガカラー)

国立天文台のヘール・ボップ彗星観測チーム [福島英雄、渡部潤一(国立天文台)、高田昌之(電気通信大学)、木下大輔(東北大学)] は、冷却 CCDカメラとカメラレンズを組み合わせた広視野撮像装置を長野県木曽郡にある東京大学理学部天文学教育研究センター木曽観測所の構内に設置し、3 月 5 日から 11 日にわたって、ヘール・ボップ彗星の尾の構造の観測を行った。その結果、発達してきた塵の尾のなかに数本の「シンクロニック・バンド」と呼ばれる筋状の構造を検出した。このバンドは少なくとも 4 本以上が存在し、最も明るいものは核から 2 度程離れており、長さは約 24 分、方向は位置角 340 度、すなわち太陽と彗星とを結んだ直線の方向にほぼ一致している。 RGB 分解による三色合成カラー画像では、バンドの色も塵の尾の色と等しく、この構造が塵であることを物語っている。
シンクロニック・バンドは、これまでにムルコス彗星( 1957 年)、セキ・ラインズ彗星( 1962 年)、イケヤ・セキ彗星( 1965 年)、ウエスト彗星( 1976 年)などの彗星で観測された事があるが、いずれも太陽からの距離が 0.5 天文単位よりも近い場所でしか観測されていなかった。今回のヘール・ボップ彗星のように、太陽からの距離が 1 天文単位という遠方で、この構造が出現したのは初めてである。
シンクロニック・バンドは、稀にしか観測されていないために、その成因も良く分かっていない。もともと彗星から同時に放出された塵が作る形状 (シンクロン曲線) に似ていたので、シンクロニック・バンドと呼ばれるようになったが、その後の研究では、塵の一時的な放出だけでは説明が付かない事が判明している。これまでに塵の尾の中のサイズの大きな塵が分裂をしてできるという分裂モデル(Sekanina & Farrel, Astron. J., 87, 1836, 1982) や、可視光を反射できなくなるサイズまでの寿命が一定であると考える有限寿命モデル (Nishioka & Watanabe, Icarus, 87, 403, 1990) などが提案されているが、いまだに決着がついていない。
今回のヘール・ボップ彗星のシンクロニック・バンドの出現により、その形成モデルに決着が付く可能性があるほか、彗星の塵の成分などに関して貴重な情報が得られると期待されている。
                            (国立天文台 天文ニュース 89号 から)

シンクロニック・バンドが写った画像は、国立天文台のホームページにて公開されている。
          参照 http://www.nao.ac.jp/whatsnew/index.html

[編集室から] せっかくSynchronic Bandの明確に写った写真を渡辺さんから頂きながら、1頁に載せた写真にそれを再現することができませんでした。大変に申し訳ありません。


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