編集室から 


 明けましておめでとうございます。1999年という、声を出して唱えると、何とも言えない響きのする年を迎えました。皆様、いかがお過ごしですか。当編集室のまわりは、二日程前からやってきている寒波に覆われて、すっかり雪化粧となっています。昨年の大雪を思えば、まあこの程度はどうということはないのですが。
 「あすてろいど25号」をお届けいたします。この号から実は編集ソフトが替わりました。24号までは「ページメーカー」を使ってきました。実はもう10年程前になりますが、「あすてろいど」が生まれるきっかけは、マッキントッシュ・コンピュータとページメーカーというソフトとの出会いでした。キーボードとにらめっこしながら、ワープロで論文や書類を作っていた当時、マウスを使った自在なレイアウト編集は、本当に衝撃的でした。今から見ればずいぶんたどたどしい使い方でしたが、それでも92年に出した第1号から昨年末の24号まで、ページメーカーには本当にお世話になってきました。しかしこの25号からは「クォークエクスプレス」で編集しています。理由は印刷に出すときに、そのほうが都合が良いからです。最近、印刷界はすっかりクォークが主流になってしまいました。このソフトは慣れるにしたがってその使い勝手の良さがよく分かり、本当に良くできたソフトだと、またまた感心しています。ただ、今お話ししたいきさつから、編集しているときの気分は複雑でした。
 前置きが大変長くなってしまいました。この号も大変熱のこもった原稿がたくさん集まり、全28頁ということになりました。ご協力ありがとうございました。ところで1999年、JSGAにとってのトピックスは、何と言ってもNEO観測用の光学観測装置(口径1mおよび50cmの望遠鏡と関連施設)の建設工事が開始されることでしょう。2001年初頭には本格的な小惑星の観測ができるようになる予定です。これはスペースデブリの観測と共用の施設ですが、NEOの観測に関してはJSGAが責任をもって進めることになります。そのための組織固めとともに、実際に観測やデータ処理・管理に携わる人材の確保が緊急の課題となってきました。2月21日に開かれる第2回JSGA総会でも中心の議題となります。会員の皆様の積極的な参加を期待しています。
 矢野さんのエッセイ、「Houston, I have a problem」は、宇宙開発の将来についての示唆に富む、力作となっています。冷戦下の危機意識と国威発揚を強力なモチベーションとした、宇宙開発時代第一幕が終わりました。これから第二幕の開演を待っているところです。今年から建設が本格化する宇宙ステーションが、幕間をつないでくれることになるでしょう。しかし、問題は第二幕の内容がなかなか予想できないことです。何がモチベーションとなるのでしょうか。矢野さんが唱えておられる、誰もが、いつでも宇宙に行ける、というガイドライン?には同感します。航空機も初期には軍用などの特殊なミッションや、特別な操縦技能を持った人たちによるショウで使われていました。しかし、現在運行されている国際線に搭乗する日本人乗客の85%以上は、観光を目的としています。これは統計的な数字であり、観光といっても仕事を兼ねることも多いことでしょう。しかし、通信ネットワーク等のこれだけ発達した現代でも、わざわざ航空機に乗って出かけるというのは、実際に行ってみようという人間の本心に依存し、また搭乗を容易にする環境が整って来たからでしょう。宇宙についても、誰もが、いつでも行かれるインフラが確立すると、乗客が増え、その結果運用コストも安くなってきます。そにに伴い、新しいたくさんの経済活動が生まれてくるでしょう。そのような環境が宇宙開発第二幕を推進することになるかもしれません。そうすると第二幕に向けて必要なのは、低コストの宇宙輸送系、それを可能にする技術の確立ということになりそうです。輸送コストを現在の10分の1、いや100分の1にする「空飛ぶおにぎり」、あるいはもっとスマートに滑走路を離陸していく「スペースプレーン」の実現。これは大変に「至難のわざ」のように見えますが、「昨日の夢は今日の希望、そして明日の現実」というゴダードの言葉を信じることにしましょう。
                  (写真は編集室の近くです。  松島)


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