月面NEO望遠鏡の実現に向けて

                    月面・軌道上望遠鏡検討委員会
                    委員長 浅井 義彦(東日本国際大学)


 会員の皆様は、我が国の主要な宇宙開発推進機関である「宇宙開発事業団」と「宇宙科学研究所」の共同ミッションとして、月探査周回衛星計画(SELENE:SELenological and ENgineering Explorer)が進められている事をご存知だろうか。本誌の第24号にも紹介されている通り、現在のところSELENE-Tは2003年、次期ミッションであるSELENE-Uは2006年頃に宇宙開発事業団のロケット(H-UA)による打ち上げが予定されている。2003年のSELENE-Tは、既に実際的な作業段階に入っており、後継ミッションであるSELENE-Uについては、ミッション構想の検討を進めるために「国立天文台」を加えた月面着陸探査研究会が設置され、絞り込みの作業が進められている。研究会には、JSGAから、望遠鏡の専門家でもある磯部会長(国立天文台)と、データ解析の専門家である馬場先生(北海道大学)、月の専門家であり研究会の事務局でもある寺薗さん(日本宇宙フォーラム)と浅井が出席しており、現在までの基本的な検討結果として、搭載ミッションには、宇宙科学研究所(ISAS)のペネトレーター、宇宙開発事業団(NASDA)のローバー探査、そして国立天文台(NAO)の月面天文観測装置(これがNEO観測に使用されることになる)が含まれることが概ね決定され、3月23-24日の両日に国立天文台で開催される次期月探査シンポジウム「セレーネ2号機をめざして」において、今年度の最終的な検討結果として発表されることになっている。
現在JSGAが提案している月面NEO望遠鏡は、口径30cm程度のもので、他のミッション(月面緯度観測や赤外・紫外による天文観測など)との共用の可能性について検討・調整が進められているが、この望遠鏡を実現することによって、地上望遠鏡と同様に期待される観測成果以外にも、
・将来の本格的な月面観測基地の基礎研究
・ 地上からは観測できない太陽方向の観測
・ 地上やNEO観測衛星との連携による相関観測
などの新たな可能性が期待されている。
 しかしながら、我が国の月ミッションは、宇宙科学研究所の「はごろも」が月周回軌道に入り(実際には周回軌道投入用の噴射光確認のみ)、「飛天」が月重力によるスウィングバイ航法の実験後に、周回軌道からハードランディングを行ったミッションだけであり、月面へのソフトランディングを含むSELENE計画自体が、新規性の強い挑戦的な計画であるとも言える。さらに、ミッションを成功させるためには、スペースに特有の技術的問題を解決するだけではなく、経済的問題や組織的問題を始めとする様々な問題を克服しなければならず、JSGAでは、これらの諸問題に対応し解決するため、2月21日の総会で報告・承認された通り、「月面・軌道上望遠鏡検討委員会」を設置して具体的なミッション遂行に向けての体制作りを始めることとなった次第である。
 今後は、ミッションの詳細や進捗状況などについて、機関誌やインターネットを通じて報告し、幅広く会員の方々からの率直な意見・協力を仰ぎ、素朴な疑問や発想にも耳を傾け、批判や対立意見によって吟味されることがミッションを強力なものにするという、民主主義的な組織の利点を活かして作業を進めて行きたいと考えている。 ( 1999.3.20.)

 委員会への、ご意見・ご質問のある方、
 または委員に立候補して頂ける方は、
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 現在の委員:磯部 秀三、馬場直志、浅井義彦
 E-mail : asai@tonichi-kokusai-u.ac.jp


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