特集 活発化するNEO探索計画 

      グローバルな破壊をもたらしうる小惑星の検出

                   磯部 しゅう三(JSGA会長/国立天文台)


 現在までに、地球に衝突しうる軌道を持った小惑星は500個あまり発見されている。そのうちの大部分はHが18.0等級より暗いものである。つまり、直径が約1キロメートルより小さいものである。直径1キロメートルより大きい小惑星が地球に衝突すると、グローバルな破壊をもたらし、人類は壊滅的な打撃を受けることになる。そのような小惑星で地球近傍軌道を持つものは2,000個から1万個あると言われている。
 近年にアメリカの地球近傍小惑星探査望遠鏡が次々と動き出し、LINEAR、NEAT、Spacewathch、LONEOSの4台になった。それらによる危険な小惑星の検出が加速度的に増大している。表はA. HarrisとD. Morrisonが調べたものである。

    発見望遠鏡  1997年後半 1998年前半 1998年後半| 全体
    LINEAR      2    10    26  | 38
    NEAT       3     5     2  | 10
    Spacewatch  1     2     1  |  4
    LONEOS      0     0     4  |  4
    その他       2     2     2  |  6
   −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
      計       8    19    35  | 62

 LINEARとLONEOSが動き始めたので、かなりの数の直径1キロメートル以上の地球近傍小惑星が検出されるようになってきたが、それでも1年に総数の100分の1程度である。この状況では危険なものを90パーセント検出するにも100年近い年数がかかってしまう。Spaceguard計画が主張している20年間に90パーセントの検出をするには、また約10倍の効率、つまり性能の良い望遠鏡を10−20台以上建設する必要がある。
 日本が美星町に建設している望遠鏡はLINEAR並み、またはそれ以上の性能を有しているので、Spaceguard計画に大いに貢献できるが、それでも安心できるレベルに持ってくるには、まだまだ高性能望遠鏡が不足していることがわかる。日本の貢献する2台目、3台目の望遠鏡建設に向けて、日本スペースガード協会は政府や民間の援助を得る努力をより一層していく必要がある。

   


 [コメント] 

                    矢野 創(NASAジョンソン宇宙センター)

MITのリンカーン研究所のジャーナルによると、以下のような数値もあります。記事は多少違いますが、これまでの積算とノーマライズした月間発見数で比べた方が、性能と功績を比較しやすいと思います。

プログラム 期間(時間)     検出数   検出/月 新発見/月 新発見NEO/月
LINEAR 3/98-5/98(3 Mon.)   58719 9573 3027   12
Spacewatch 1/95-12/96(24 mon) 69308 2888 459    2
NEAT 10/95-3/98(30 mon.)      23061 824 53      1

LONEOSは載っていませんでした。出典は、G.H. Stokes, F.Sherlly, H.E.M. Viggh, M.S. Blythe, and J.S. Stuart: The Lincoln Near-Earth Asteroid Research (LINEAR) Program. Lincoln Lab. J., MIT, Mass., U.S.A., Vol.11, No.1, p27-40, (1998). Spaceguard計画が主張している20年間に90パーセントの検出をするには、また約10倍の効率、つまり性能の良い望遠鏡を10−20台以上建設する必要がある 。だからこそ、歌島さんのSGSTの検討結果(=一台の1mL4望遠鏡x5年が地上の10台のSGGT望遠鏡x27年に匹敵する)が注目に値するのではないでしょうか?LINEARの成果を飛躍的に超えたいなら、世界中にあと10倍の望遠鏡と10倍近い年月のコミットメントを求めるより、一国か数カ国によるSGST案1台のほうが可能性が高いと思います。 


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