編集室から

                              松島弘一


 岡山県美星町に建設中のスペースガード天文台の建設が着々と進み、また米国に発注された望遠鏡の製作も順調のようである。日本スペースガード協会も、特定非営利活動法人(NPO)の申請が東京都で認められ、今年の末までには、いよいよ特定非営利活動法人日本スペースガード協会が誕生する。NPO(Non-Profit Organization)という言葉は、最近よく耳にするようになった。ただNPOとは何か、ということに関して様々な議論もあり、明解に規定することは簡単ではないようである。しかし、基本的には「「市民のボランティアから個人・企業の寄付、助成財団の助成金、行政の補助金などの資源を広く活用しながら、組織として活動し、公益的な財・サービスを提供する、独立・非営利の民間団体」(NPO推進フォーラム)ということになるようである。市民生活や社会の多様化の中で、公共機関では対応の困難な社会的サービスや事業を分担するとともに、それに参加することによって各個人の活動の場が広がり、生活の充実につながるという側面も併せ持っている。しかし、その具体的形態はボランティア活動をはじめ、今後様々な活動を行うNPOが誕生していく中で、明確になっていくことであろう。JSGAの活動がこのようなNPOの主旨に合致したものであるかどうか、ということに関しては議論もあると思われる。ニュースのページにもあるように、NEOの探索、研究、そして情報の一般への伝達といった作業は、本来国の機関が責任体制を明確にした上で実施すべきことかもしれない。将来はその方向に進める努力をするとしても、当面JSGAをして、NEOの探索を公共的活動として可能にしてくれるのは、やはりNPO法であろう。ともかくこの法人化によって、国の予算で建設される望遠鏡を使った本格的NEOの探索を、JSGAは米国、欧州と協力して開始することになる。「祝 JSGAの法人化」、しかし作業量も、そして責任もうんと重くなる。会員の皆様の協会活動への積極的参加に期待すること大である。。
 大変堅い話になってしまったが、1999年7月、遂にノストラダムス先生の予言された問題の時が、刻々と過ぎて行こうとしている。梅雨の晴れ間、待ちかねたようにひぐらしの声が響いてくる。この静かな世界に恐怖の魔王はどのような姿で登場するのか想像するのが難しい。今月のイメージにおける由紀さんの考察は、いささか真面目さに欠けるきらいはあるが、大予言をこよなく愛し、エンジョイする方々の一面を伝えている。このまま問題の時が何もなく過ぎてしまったとき、この方々はどのように対応されるのか、これも楽しみである。
 ところで昨年から近い将来、かなり地球に接近し、衝突の可能性も幾分かは考えられるという天体の発見が相次いでいる。このような天体の発見は、NEO問題に関わる幾つかの基本的課題を、浮き彫りにすることとなった。衝突の危険をどう評価するのか、発見された危険天体のフォローアップをどうするのか、そして一般への情報伝達をどのようにしたらよいのか、といった課題である。今年6月のイタリア、トリノでの会議での議論も、かなり熱が入ったようである。この辺の状況を、磯部会長、吉川さんに紹介していただいた。またインターネット上に飛び交うニュースについて、祖父江さんに整理していただいた。紙面の都合で、かなり省略せざるをえなかったのは残念であるが、このニュース紹介は今後継続してお願いすることになっている。今後NEOの探索が世界的に本格化するにしたがい、情報も多様化し、その紹介はますます重要になると思われる。
 この号から編集室にもう一人、強力な助っ人が加わった。Jona(イオナと読む)さんである。もちろん、純粋の日本青年である。本業ではないが、絵を趣味とし、そして大変上手である。今回は「今月のイメージ」、及び最終回を迎えた「ちょんまげ頭で見た天体」にその一端を見せてもらった。これからも、幾分堅くなりがちな紙面を、楽しいイメージで和らげてもらえると期待している。
 最後に6回にわたって、大変おもしろい、しかも研究の進行に合わせて充実した内容の連載をして頂いた渡辺さんに感謝したい。江戸時代に作られた望遠鏡を中心に、様々な研究者を結んでエネルギッシュな研究活動を展開された行動力には本当に脱帽でした。
                (写真はブリュッセルで見るNEOの進入?)


  27号の目次/あすてろいどHP