最近のニュースから

                  祖父江博臣(日本電気)/編集室

 NEOの観測、衝突問題、そしてスペースガードに関して、国際的に様々な動きがあります。これらの多くはインターネットや電子メールを通して世界中に配信されています。その中から、主要なものを選んで、毎回紹介していきたいと思います。
 これは会員の祖父江博臣さんの全面的な協力でできています。祖父江さんには多数のニュースの中から適時選んで、日本語訳を作って頂いています。それは会員へのメール、及びJSGAのホームページでもご覧になれます。


 今後半世紀ほどの間に地球に大接近し、最悪の場合には衝突の恐れのある小惑星の発見が相次いでいます。(本誌4〜7ページ参照) 6月上旬にはイタリアでImpact Workshopが開催され、世界の有力な専門家が集まり、小惑星のImpactの脅威について、熱心な討論が行われました。(本誌16〜17ページ)
 英国ではこの会議の提言に基き、UK SpaceGuard協会会長 テート氏(Jonathan Tate)がプレスにプレスリリーズの形式で、国の機関設立の必要性を訴え、これに応えて、”The TIMES”と”Guardian”紙が、専門家にインタビューの形式でスペースガードの必要性を明らかにして、間接的にこれを支持する記事を掲載しています。これら英国でのニュースを中心に、NEO問題の現状を展望してみます。

1.J.Tate氏(英国スペースガード協会会長)の記者発表から

<要約>
 NASA/USAF LINEAR (Lincoln Laboratory Near Earth Asteroid Survey)の共同Projectの様なアメリカの取組みに感謝したい。潜在的に危険な物体( PHOs )の発見率は急速に増えている。それが安全であると宣言する前に より詳しい観測で、物体の軌道を決定しなければならない。現在科学コミュニティーは恐怖感をかき立てないで、大衆に脅威を説明する問題と取組んでいる。UKは組織化された専門家のガイダンスや助言が得られない。合衆国のみが効果的な検出計画や政府に助言できる組織を持っている。他の国々は脅威に関するほとんどの情報を合衆国に頼り切っている。
 今日、英国上院で、Tanlaw 卿は地球と交差する小惑星やすい星をモニターする国立Spaceguardセンターの設立について政府に質問し、更に最も重大な環境の脅威から我々を守る方策について政府にアドバイスするとのことである。3月に衝突の危機の議題が下院で討議され、政府に代わって答弁したジョン・バトル氏は、脅威の重大性を認め、それ以上の調査を約束する等、前向きであった。
 先週、イタリアで 世界の専門家を集めた重要な会議に於いて、特にヨーロッパで国立Spaceguardセンターを設立するために、政府を督促する決議案が採択された。UKは国際的にこの分野で世界をリードするに理想的な状況である。それは充分な人数のプロ集団と観測器具の設計や開発の分野で世界を引っ張っていけることである。衝突の確率が充分高くなった状況では、政府にアドバイスをするプロのチームが必要であろう。この件で Sainsbury卿がTanlaw卿の問にどう回答するか非常に興味深い。

         *********************************

2.「地球に向かってくる小惑星を見失う」
            −ロンドンタイムズ(6月14日付け)−

<要約>
いい知らせは天文学者が地球と衝突進路上にある小惑星を識別出来たということで、悪い知らせはそれを見失ったということである。1998 OX4は、昨年アリゾナ大チームが発見し、その後2週間程追跡していた。科学者は集めた情報で、物体のおよその軌道を推定した。それは直径数百メートル、もしそれが地球に衝突するなら大陸規模の破壊の威力があると信じられている。Milani を中心とするピサ大学チームが衝突の可能性を計算し、先週のトリノ会議で、2046年に地球と衝突する可能性は1千万分の1であると報告した。衝突が皆無でないことが明らかとなった2番目の物体である。その1998 OX4を見失ったことは厄介なことである。小惑星との衝突を専門とするイギリスの天文学者Duncan Steelによると「1998 OX4で提起されたジレンマがますます多くなるであろう」ということである。「探索密度が高くなれば、多くの潜在的に地球と衝突する可能性のある物体を発見する。しかし発見された物体を追跡する十分な体制が無い」というわけである。このことは誤った警報の増加につながる。発見した物体のフォローアップが非常に重要なのである。彼は1998 OX4をあまり心配していない。しかし「何れ、衝突確率が千分の1の物体を発見するであろう。その時パニックが引き起こされることになる」と明言した。「我々は英国の中に責任をもって助言する機構が必要」と力説した。
 1998 OX4の教訓は、「NEOを発見したときそれを再び見失わないことである。1998 OX4を再度発見する可能性は低い。それは干し草の山で針を見付けて、それを再びその中に投げ返すようなものだからである。」

        *******************************

3.「天文学者が2020年の視力を捜す」 
             −ガーディアン(6月10付け)−

<要約>
 昨年7月、小惑星1998 OX4 がアリゾナ大学チームによって発見されたが、暫く後にそれを見失った。ピサ大学の研究者は、2046年に地球に衝突する可能性を1千万分の1と推定した。これは心配すべきことだろうか。その直径たかだか数百ヤード、ほぼ確かなことは47年後に再び勢い良くやってくること。ただもし地球に衝突すれば、百個の水爆が同時に爆発したのと同じ効果がある。
 対照的な例は1999 AN10である。それはニューメキシコの米空軍望遠鏡で1月に発見された。オーストラリアのアマチュア天文家が再度観測するまで、重要と思われなかった(南半球にはプロの追跡チームがいない)。新しいデータはこの小惑星が特に危険であることを示していた。 太陽の各周回毎に2度地球の近傍を通過する。この運動は数世紀間続き、2039年に衝突する可能性は、現在およそ500,000分の1である。この物体はおよそ直径1マイルで、瓦礫を積み重ね、町ほどのサイズの岩と金属の塊の様なもので、人類に相当深刻な影響を及ぼすに充分なサイズである。

1999 AN10は地球に極めて近い所を何度も通過することになる。木星がShoemaker-Levy 9彗星をバラバラに引き裂き、1994年に木星に一連の衝撃を引起こした様に、地球の重力が小惑星を引裂く事が有り得る。引裂かれた破片の殆どは地球の様な小さな目標を外れるかもしれない。しかし個々の危機の確率は低くても、無数に分裂した破片について安全とは言えない。6個から8個の鎖状の衝撃の傷跡を残すクレーターチェーンが、過去にそのような破片の衝突が起こった証拠である。

米国における探索で毎月多数のNEOを発見しているが、それに対してどんな対応をとるにしても、2つの肝要な必要条件がある。
 第一に各国は宇宙の弾丸に力を合わせて追跡する必要がある。そうでなければ多くの危険物を見失う。
第二に、衝突が避けられない場合、正確な情報の国内情報源を持つ事が肝要である。情報面で他国に依存する事は出来ない。

米国の探査計画は不安なほど異常接近する小惑星を加速的に発見することになるかもしれないが、もしパニックを避けたいのであれば 国立Spaceguard センターが不可欠でる。このことを理解して、政府は3月の下院討論に好意的に反応した。今週の火曜日、上院でTanlaw卿はこの問題を取上げる事になっている。積極的な姿勢が、英国をこの問題に取組む世界的な行動開始の最前線に置くであろう。
 今後12年の間に13個の目標に、宇宙探査機を飛ばすなど、小惑星とすい星を対象とした探査研究の黄金時代に入っている。 しかし危険な天体を見つけるのはこれからである。西暦2020年迄に、恐竜を殺戮した様な岩の塊りが不意に我々に迫ってこないように、宇宙の環境で20/20の視力を必要としている。英国はヨーロッパの進むべき方向を指導する用意がある、と警告を受けているのである。

       *********************************

4.「英国は小惑星探査で国際的共同推進を指向」
             SpaceViews News(6月18日付け)

<要約>
 英国政府はNEO探索には独自計画の遂行よりも他の国と共同で推進する事を望んでいる。英国上院で科学大臣Sainsbury卿は如何なるNEO検出計画でも仲間の欧州宇宙機構と協力する事が政府の選択と語り、「政府はNEOに依る衝撃の潜在的な脅威を深刻に受け止めており、国際的なアプローチが本質的な問題と認識している」と説明した。更に同卿は、機会あることにイギリス単独のSpaceguard計画を否定している。
 「現在、政府は国立Spaceguard機関を設立する計画が無い」が、しかし最近イタリアで開催されたNEO会議の報告を再検討するまで最終決断を待つであろうと付け加えた。
  3月に下院でもこの問題が取上げられていたが、それ以来、地球との衝突がゼロではない確率をもつ小惑星が2個発見された。この発見はNEOの捜索を継続s、拡大することについての世界中の関心を高めた。Sainsbury卿は政府がNEOで提起された脅威が「些細な問題」とは考えず、むしろ共同推進を呼びかけるきっかけと語り、「上院に提出される案件の中で、本件は国際的な努力が鍵であり」更に「イギリスは独自の行動より、むしろ我々の役割を演ずるべきである」と付け加えた。


 27号の目次/あすてろいどのHP