美星スペースガードセンターからの報告


       美星スペースガードセンターの建設

                 磯部 しゅう三(JSGA会長/国立天文台)

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 美星スペースガードセンターの建設は急ピッチで進んでいる。建物及びドームとスライディングルーフは完成し、12月21日に最終チェックをして引き渡しとなる。ドーム内の昼間の空調管理は熱容量の大きい望遠鏡及びCCDカメラが入ってこないと、本来のチェックはできないので、その部分はチェック対象から外される。

 0.5m望遠鏡の検査がアイオワ州のトーラス社で行われた。10月31日から磯部・吉川に日本宇宙フォーラムの横田さん、代理店の三菱商事の上田さんの立ち会いで行われた。何回もの技術打ち合わせ、作業打ち合わせに加えて、夜には望遠鏡本体を実際に動かすテトが行われた。望遠鏡の駆動速度の1秒間に10度角のテストでは、鏡筒が狂ったような速さで動くのには驚かされた。工場の前の駐車場に仮組みしただけであるので、ポインティングの精度は十分ではなかったが、狂ったように走った後にピタリと同じ位置に止まるのには感心させられた。

 仮付けのテストCCDカメラで星を写し出した。残念ながら、アイオワ市の市街光のため暗い星まで写すことができなかったが、低倍率で見たオリオン星雲等を楽しむことができた。

 チェックの結果、1カ所、重要な問題点が見つかった。望遠鏡の駆動用コンピュータが極軸の中に置かれているが、それが発熱して、架台内の温度を上昇させていた。熱のたまる場所では40度Cにもなっていた。そこで、そのコンピュータの熱をファンでパイプに吸い込み、ドーム内の排気ダクトに送り込むように追加作業をさせることにした。

 その他のごく軽微な手直しだけで、望遠鏡のハード部分は合格となった。ソフトはまだ開発途中であった。元々のシステムにある星検出ソフトは使えるので、通常の小惑星検出やデブリ(静止軌道)には問題はないが、細長く伸びた天体の検出等はまだできないので必要なソフトの追加を要請した。1月11日からの美星スペースガードセンターでの組立に向けて必要な作業を進めるように依頼した。

 0.5m望遠鏡建設は、一応順調に進んでいるが、そのCCDカメラの製作はまだ問題点が残されている。液体窒素の冷却用デュアはようやく手に入れたが、2k×4kの2枚のCCDチップの平面度(50ミクロン以内)を出すのに手こずっている。チップ内のどのピクセルも犠牲にしないために非接触の測定を行う予定であったが、精度が出ないので、接触測定に変更した。そのため残念ながら、1月11日の0.5m望遠鏡据え付け時には間に合わない可能性が強い。

 1m望遠鏡用の部材の調整もかなり進んでいる。春頃には、その姿を見せ始めることであろう。夏過ぎには美星スペースガードセンターの全システムが動き始めることが期待される。



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