美星スペースガードセンターからの報告


     50cm望遠鏡でどのような観測ができるか

                     中野 主一(日本スペースガード協会)

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我々が最初に手にする50cmでどれくらいの成果が上げられるのか,各地の NEOサ−ベイの最近の実績から考えてみることにした.表は,1999年9月28日発行のMPCから12月22日発行のMPCまで,およそ4カ月間(1999年9月から12月まで)に小惑星センタ−に報告された観測数が5000個を越える天文台リストである.第1位は,もちろん,リンカーン研究所で,彼らはこの4カ月間に約32万個の観測を報告し,9000個近い新しい小惑星を発見している.1カ月平均にして,観測数8万個,発見個数が2000個を越す.もし,ニュ−メキシコで1カ月の半分,15夜が観測可能であったとするならば,彼らは,1夜のうちに,5300個の観測を行ない,1夜の捜索で約 150個の新小惑星を発見している見当になる.
 しかし,表をよく見ると,小さな口径のサ−ベイが比較的,健闘していることがわかる.もっとも,活動的なのは41cmの小口径を使用しているカテリナ観測所のスカイサ−ベイである.彼らは,この4カ月間に約6万個の観測を報告し,1000個以上の新小惑星を発見している.リンカン研究所と同様に1カ月に15夜程度の観測数と考えると,1夜に1000個の観測,20個の新発見となる.
 おそらく,我々の50cmでも同程度の観測が得られると考えて良いだろう.そのため, 1.0-mが来るまでのとりあえずのライバルは,カテリナとしても良さそうである.ただ,問題なのは,アリゾナの空と美星の空の晴天率,透明度がどの程度の差があるのか,ということであろうか.
 ところで,1夜に1000個の観測と言っても,それらは 300個近い数の小惑星の観測となる.観測のチェックや同定サ−チのために,少なくとも,その数だけの楕円軌道,そして,連結軌道を計算する作業が観測後に必要となってくる.その間にも,もちろん,本来の目的である発見した小惑星が,新しいものか,NEO であるかどうか,などのチェックも当然,行なって行かねばならない.我々には,それ以外にデブリの観測もある. 実際には,それだけの作業ではない.2夜以上観測されて,それが新小惑星の発見として仮符号が与えられれば,あとのフォロ−アップは,比較的簡単に行なえる.しかし,1夜のみ観測(発見)されて,続く夜に確認されない小惑星が,まさにゴミのように出てくる.これらをその後の(主に1夜の)観測の中なら見つけ出し,それが同じものかどうかの判断をしていく作業も,毎晩,行なっていかねばならない.
 それがリンカーンの観測数のように,1夜に5300個の観測があがってきた場合,毎晩,1000個以上の楕円軌道,連結軌道の計算,そして,同定サ−チ・・・を行なわねばならない.実際の話として,小惑星センタ−がリンカーンからの観測の報告を受けると,他の業務が3日〜4日の間,すべて止まった状態になる.あぁ・・・これは,もう,考えたくない.というのが,率直な印象であろうか.

                 表:4カ月間に報告された観測個数

Code NEO サ−ベイ天文台 望遠鏡口径 番号登録小惑星 未登録小惑星 小惑星の新発見数 4カ月間観測合計
 704 Lincoln Lab. ETS 100cm 101,768個 217,066個 8,748個 318,834個
703 Catalina Sky Survey 41 18,252 38,905 1,117 57,157
699 Lowell Obs. LONEOS 59 20,599 19,070 28 39,669



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