美星スペースガードセンターにおける初の貢献
磯部 しゅう三（ＪＳＧＡ理事長）
日本スペースガード協会の4人の観測者は、4月に正式に採用されて以来、毎夜2名が12時間勤務で観測を続けてくれている。まだ、テスト的段階で、100%の観測にいたっていない。その間の事情については次号で詳しく書くことにする。
7月9日夜に観測者の一人、橋本就安君が静止衛星GMS-5(ひまわり)の観測中、その近くに接近してくる天体を見つけた。それは、3分角にも近付き、遠ざかっていった。そこで、アメリカ空軍のNORADが出している、2-line
element表を使って探すと、ロシアが1990年に打ち上げて、まだ活動中の静止衛星GORIZONT-22号である事が判った。御存知でない方もおられると思うが、静止衛星と言っても、じっと静止しているわけではなく、8の字を描いて動いているのである。
橋本君がGMS-5とGORIZONT-22の将来の動きを計算してみると、7月14日22時55分世界時(日本標準時では15日午前7時55分)に両者は1km(角度で約5秒角)あまりにまで近付くことが判った。これでは、宇宙スケールでは衝突する可能性があると言っても良いくらいである。その報告を受けた磯部はさっそく宇宙開発事業団の注意を喚起し、そこでの再計算を依頼した。そこで、最新の2-line
elementsと7月9日の観測値を使うと、幸いにも1kmまでには近付かなく、約6kmである事が判ったが、GORIZONT-22の軌道修正が正しく行われていなければ、衝突の可能性は免れない。宇宙開発事業団ではロシアと軌道調整の話合いを始めると聞いている。
この2つの静止衛星は、NORADのカタログには載っているが、アメリカの観測はハワイとインド洋から行われているので、若干精度が悪い。美星スペースガードセンターの観測は、真南の方角で見ているので精度が良い。そして、始めて両者が接近することを発見できたのである。美星スペースガードセンターの観測による初のお手柄である。今後1m望遠鏡が稼働し始めると、ますますこのようなお手柄のチャンスが増えるのではと期待される。
| 日時 世界時 最接近距離 h m s km 7/ 8/2000 11:21:32.70 36.6 7/ 9/2000 11:17:30.31 23.1 7/10/2000 11:13:27.92 9.8 7/11/2000 11:09:25.53 4.8 7/11/2000 23:07:23.74 39.7 7/12/2000 11:05:23.14 17.8 7/12/2000 23:03:21.41 26.2 7/13/2000 11:01:20.75 31.3 7/13/2000 22:59:19.08 12.6 7/14/2000 10:57:18.35 44.8 7/14/2000 22:55:16.75 1.0 |
|
GMS-5 C2000 07 09.47448 15 58 21.03 -05
34 56.8 15.1 V GORIZONT-22 C2000 07 09.47448 15 58 17.80
-05 31 35.5 13.0 V |
| （図の説明） 7月9日の美星スペースガードセンターにおける画像.上から順に7月9日11時23分15秒, 11時24分50秒, 11時26分13秒(世界時)の画像である。 |