国道7号線に沿って
                −チュレアール、アンブースチャ、フィナランツォア、イオシ−

 タナから日食観測予定地イサロ国立公園までは、国道7号線に沿って約600kmほど南下することになる。ガイドをつとめてくれたのは、浅川さんのところで働くツアーオペレータのラザフィンドラコト・トキさん。大変にしとやかで、可愛いお嬢さんであるが、また大変な才媛でもある。フランス語とマダガスカル語は母国語であるからいうまでもないが、英語と日本語は大変に堪能、それにドイツ語とスペイン語もほどほどに使える。昨年、東京の某放送局がマダガスカル特集のために行った取材に際しては、そのガイドもつとめたそうである。もちろん、われわれのツアーでもガイドをしてくれることになっている。このトキさんに会えただけでも、若い男性諸氏はマダガスカルに来た甲斐があるというものである。ただ念のため付け加えさせて頂くと、空手歴8年、週二回の練習を欠かさないそうである。


 観光旅行というと、古代の遺跡だとか、目を見張るような自然の景観だとかをどうしても期待する。しかし、マダガスカルでそのようなものに過度の期待を寄せることは避けた方が無難かもしれない。タナを出発してから、最初の日はアンチラベに泊まり、翌日はアンブースチャ、フィナランツォアと立ち寄って、ツアーの宿を探したり、昼食をとったりしながら、夕方イオシに着いた。最初は緑豊かな田園地帯であったが、フィナランツォアを過ぎたあたりから荒涼とした感じになり、道も起伏のあるものに変わる。しかし、その風景は日本とはいささか異なるにせよ、おおむね穏やかであり、それはマダガスカルに生活する人の気質にも影響しているように見える。マダガスカルの人たちの控えめで、温厚な態度は、今回の旅を通して常に感じたことである。その中にあって、われわれのランドクルーザーを運転するブリス君のドライビングテクニックだけは際だっていた。車の能力と道路の凹凸という拘束条件で速度最大を評価関数とする最適問題を、リアルタイムで解いているように見えた。ツアーに参加される方はブリス君の運転にだけは過度の期待をしても裏切られることはないと思われる。


図上:ツアーオペレータのトキさん。JSGAのツアーでもガイドをして頂くことになっている。

図下:国道7号線(チュレアール附近)