何と言ってもバオバブ
                        −モロンダバ−

 マダガスカルのシンボルとも言えるのがバオバブの木である。サン=テクジュペリの「星の王子さま」にも登場して、さんざん悪口も言われているが、これは実に不思議な姿の木で、太いずんどうの幹の先端にだけ葉が茂っている。8種類ほどあるバオバブのうち、6種類がマダガスカルに生息するのだそうで、アフリカ大陸でももちろん見られるが、壮観な眺めという点ではマダガスカルの右に出るところはないらしい。特に日本人に人気があるのだそうで、そういえば欧米のガイドブックにはそれほど大きく取り上げられているわけではない。モロンダバから車で1時間ほどのところにあるバオバブ街道が特に有名であるが、田園風景の中に林立するバオバブの遠景もなかなかのものである。


 気温は30度をはるかに超え、熱帯の焼け付くような太陽の光を頭上に頂きながら、冷房とは無縁のタクシーで窓をいっぱいに開け、風とそれに見合うほこりを併せて取り入れながら見物にでかける。バオバブ街道に至る途中に「聖なるバオバブ」と呼ばれる、畑の中に孤立した巨木がある。これを間近に見て驚嘆しない人はきわめて少ないのではないかと思われる。これがなぜ神聖な木なのかとう説明も不用である。木の周囲が21m、高さ25mということであるが、まるで巨大なロケットのように天空に向けてそそり立っている。まわりに茂る灌木を分け入り、その巨木を見上げた途端にまず驚嘆し、すぐに手を合わせたくなるような畏敬の念に襲われる。やがて興奮が落ち着くと、世の中によくぞこのような木が存在したものであると、あらためて呆気にとられる。「日本人、バオバブ好きね」などとバカにされようとも、マダガスカルを訪れたからには一見の価値があるのである。


図上:神聖なるバオバブ

図下:巨大なバオバブの木で遊ぶ子供達