バオバブ:
私は、あの不思議な姿形をしたバオバブの林立する平原に夕日の沈む、お伽の国の絵のような幻想的な景色に見とれながら、なかなか、今、現実に自分が、日本から遠く幾千キロも離れたマダガスカルの地に居て、これを眺めているのだと言うことを実感することが出来ませんでした。
何時か何かの写真で、バオバブの木を見て、何と奇妙な形をした木だろう、ずんぐりとした太い幹に、途中全く枝が無くて、てっぺんにのみ頭の髪の毛のように短い枝を茂らせている、遙か見知らぬ太古の地球に生えていたか、空想上のお伽の国に生えている木ではないかと思ったものでした。
出来れば一度、実際のものを見てみたいなあと、その時ちらりと好奇心が湧いたのは事実ですが、とても現実のものになるとも、実現の可能性が生じるとも、全く期待しておりませんでした。
それが、今、こうして美しい夕日の中、バオバブがシルエットとなって立ち並ぶ姿を眺め、見惚れているのです。夢心地のまま、二度とこの景色を見ることはないだろう、もっと良く見て置かなくてはと、しきりに自分に言い聞かせたものでした。
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