アッシャーさんの講演会

-西はりま天文公園での講演会-
加藤 公子(日本スペースガード協会)



 今回、アッシャーさんの講演会が開かれる西はりま天文公園は、姫路から姫新線で1時間と少々の兵庫県佐用町にあります。この日は6月10日で「時の記念日」、途中の明石駅のホームでは、「時間を大切に」のたすきを掛けた人たちがパンフを配っていました。
 佐用駅を降りて古い町並みを北上し中国自動車道の下をくぐると、道はミニいろは坂とでも言いたいようなカーブ続きの坂道になりました。天文公園は高さ423mの大撫山の上にあり、徒歩で登るのはこの暑い時期にはとても厳しそうです。
 定刻の少し前に、山頂一帯の広い公園に講演会のアナウンスがあり、4、50人ぐらいの人たちが天文台のスタデイルームに集まりました。通訳は大型バイクでカッコよく登ってきた、神戸大学大学院で太陽系のダストの研究をされている田口さんです。アッシャーさんはまずJSGAのマークをスクリーンに映してから、「宇宙からのインパクト」と題する講演を始められました。

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Photo by katou

 小天体の衝突という現象がおこるかどうか、直前に予測できたらよい。流星雨のようなチリは大きな被害を与えないが、スペースデブリも被害を与えるので調べておく必要がある。太陽の周りを回る天体で大きなものは昔から知られていた。火星と木星の間の空隙も知られており、もう一つ惑星があるのではないかと考えられていた。1801年にセレスが発見され、その後次々に同様の天体が見つかって、そこは小惑星帯といわれるようになった。
 1898年に発見されたエロスは興味深い天体であり、楕円形の軌道で地球に近づく。ニアシューメーカー探査機がエロスに近づき、沢山クレーターがあるのを撮影した。10年前までに地球に接近するものを含む多くの小惑星が発見された。それらの軌道を図に書くとこのようになる。(図を映す)その大半は詳しい軌道が分かっていない。この中で地球に向かって飛んでくるものがあるかも知れない。
 つぎに彗星は小惑星と違って、太陽に近づくと表面が溶ける。JSGAは危険な小惑星と彗星の検出を美星で行っている。この観測は一ヶ所だけでは、天候が悪くて見つけられないこともあるので、国際的なプロジェクトとして行われている。広域の空を一度に撮影できる望遠鏡が必要であり、美星にあるその望遠鏡の写真をお目にかける。
 直径100mぐらいの小惑星が太平洋に落ちると、津波が起こり太平洋沿岸の都市に被害が出る。ツングースカに落ちたような、直径50mぐらいのものが東京に落ちると大変な被害になる。
 これからの時間は大気圏に飛び込む、小さい天体についてお話する。流星はミリサイズの天体だが大気との摩擦熱で光る。時々、地球が彗星の残したチリの流れの中を通ると、流星雨が起こる。毎年起こる流星雨には、しぶんぎ・ペルセウス・ふたご座のものなどがある。しし座流星群の母体は、33年に一度地球に近づくテンペル・タットル彗星が他の彗星と同様、表面が太陽の熱で溶けてガスになり、放出したチリである。タットル氏は海軍軍人を辞めて、天文学者になった人である。同彗星は逆行軌道なので、チリは速いスピードで地球に衝突する。11月中旬にはチリの軌道と地球の軌道が重なり、流星雨が見える。その軌道の中心がしし座にあるので、しし座流星群という。1966年のそれは20世紀最大のものであった。よく見える年と見えない年があるのは、テンペル・タットル彗星が残したチリの帯が狭い区域に限られているからで、もっとも激しい流星雨は約1時間しか見られない。チリの帯は時が経つにつれ拡散して薄くなっていく。チリの帯がどこにあるか、地球以外の惑星の影響も含めて計算で求める。1833年の大流星嵐が、現在の流星研究のきっかけになった。

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Photo by katou

 このあとの、しし座流星群の出現予想の話は、昨秋の仙台での講演と同じ内容なので、「あすてろいど」の33号をご覧下さい。そして、「まだ詳しい計算はしていないが、2034年にはよい条件が巡ってくる」と締めくくられました。若い世代のかた、どうぞご期待下さい。
 講演会終了後、アッシャーさんと一緒にJRで、美星スペースガードセンターへ向かいました。電車の中で居眠りをするのは日本人だけと聞いていたので、早暁自宅を出た疲れが出てきましたが、しっかり目を開けていました。ふと会話が途絶えたのでアッシャーさんの方を見ると、お疲れだったかコックリコックリしておられました。