2025年7月14日 紅山 仁 (コートダジュール天文台)
2025年6月のニースは暑かった。6月中旬には最高気温が30度に到達し、梅雨のまっただ中の日本より一足も二足も早く真夏の天気となった。それも一日ではなくほぼ毎日だ。平均気温などを記憶するのが苦手なので、翌年には忘れていることがほとんどだが、2025年6月のことは忘れないだろう。昨年のパリオリンピックでも話題にもなったように、フランスにはエアコンがない家が多い。我が家も例に漏れず、連日暑くて眠れない夜が続いた。年間300日晴れるというニースの気候は好きだが、これほどまでに暑いと晴天すらも嫌いになってしまいそうであった。
暑さから逃げるためにニースから車で1時間ほどのサン=マルタン=ヴェズゥビ (Saint-Martin-V?subie、カタカナの読みはフランス人の同僚の発音を参考) を訪れた。海岸沿いではないが、この町もニースと同じくアルプ=マルティム県 (Alpes-Maritimes) に属している。海沿いの印象があるニースだが、意外にも少し車を走らせれば自然で溢れていて、サン=マルタン=ヴェズゥビのような小さい町がたくさんある。暑さから逃げる以外の目的はないが、強いていうならサン=マルタン=ヴェズゥビにあるビール醸造所 Brasserie du Comt? を訪れることであった。 Brasserie du Comt? のビールはニース市内のスーパーでも買うことができる。おそらくニース産ビールの醸造所として最も有名な醸造所だ。これまでにニースで2つのワイナリーを訪れた経験から、こういう場所にはフレンドリーすぎる店員さんがいて、何杯も無料で飲ませてくれることを知っている。 Brasserie du Comt? の試飲は1杯だけであったが (とはいえ350 ml 程度としっかり量がある)、どれにしようかと悩んでいると、試飲の試飲として複数の銘柄を飲ませてくれた。そして、酔っ払ってしまったせいか、店員の人柄に惹かれているからか、倹約家の関西人でも思わず1ダース買ってしまう。こちらで生活していて日本の落ち度のないサービスが恋しくなることもあるが、南仏らしい、完璧とは言えないけれども、人間味があって温かいサービスは日本では味わうことはできないのかもしれない。
フランスでサン=マルタン=ヴェズゥビというと、2020年10月の暴風雨による大洪水が思い起こされるようだ。車を運転してくれた同僚に洪水のことを教えてもらい、サン=マルタン=ヴェズゥビに着いて驚いた。5年前の洪水の被害はまだ復興しきっておらず、その被害の大きさが実感できた。近くのスーパーの店員さんも復興が遅いということを嘆いていた。
ちなみにニースで1年過ごしてみて、車の免許があると南仏を数十倍楽しむことができるということに気づいた。もちろんフランスで車を運転するためにはフランスで有効な免許が必要だ。日本の免許を持っていれば、簡単にフランスでの免許に切り替えられるらしい。ただしこの切り替え手続きは日本出国後1年以内に完了する必要があり、私はその機会を逃してしまった。ニースに滞在する予定で車の運転に不安がない人は、ぜひ早めに検討してみることをおすすめする
写真1.付近の高台から見下ろしたサン=マルタン=ヴェズゥビの中心地。街の手前にある白い部分は2020年の大洪水で被害を受けた箇所。落ち着いた街のすぐ近くには復興中の痛ましい光景が広がっていた。
写真2. サン=マルタン=ヴェジュビーの街中で見かけた牛の行列。大きな鐘の音と共に近づいてきた。