日本スペースガード協会は、軍事的組織ではありません。 地球に接近す るような天体の発見と監視に関する情報の社会的共有を図ることを主な目 的としています。その情報を基に、もし危険回避の行動が必要であれば、そ れは公的・国際的組織(政府・国連等)が実施するものです。日本スペース ガード協会は、そのための協力を惜しまないでしょう。
いいえ、違います。もちろん、その名前のとおりに天体の地球衝突という 話題が中心的なものになりますが、より一般的に太陽系にある小さな天体に ついてその発見や追跡などの観測をサポートしたり、研究交流を促進したり、 さらには広くみなさんに情報をお伝えしたりもします。私たちとしては、小 惑星のような小さな天体を単なる「悪者」にしたくはないのです。と言うか、 小天体は悪者ではありません。小さい天体は、形成されてからあまり進化を していないと考えられています。つまり、太陽系が形成されたころ(今から 約50億年前)の情報がこのような小天体にはまだ残っている可能性が高い のです。このように小惑星は太陽系の起源や進化を知る上でその鍵となるか もしれない天体です。また、これからの人類の宇宙活動にとっても重要な天 体であるかもしれません。あまり目立たない天体ですが、是非、皆さんにも 関心を持ってもらいたいと思います。(ただし、小天体といっても地球に衝 突するようなことがあると大変ですので、あらかじめそのような天体がある かどうか確認をするということは重要ですね。)
そうですね。実は、この協会の名称を決めるときにずいぶん悩みました。 しかし、いい日本語が出てきませんでした。それに、国際組織やいくつかの 国に設立されています同様の組織の名称には、“Spaceguard”という言葉が 使われています。それで、この言葉をそのままカタカナにして用いることに しました。これを日本語に直訳して「日本宇宙防衛協会」などとするよりは、 いいと思います。もし、いい名称がありましたら是非教えてください。もっ と夢のある名前がいいですね。
天体の地球衝突といった問題を扱う組織として、「国際スペースガード財 団」というものがあります。これは、1996年3月27日に設立されたもので、 本部はイタリア・ローマにあります。地球近傍小天体問題に対する対応にお いては本協会が目指すものと同じですが、その活動は国際的なものであるの で、当然のことながら世界各国の研究者が参加しています。また、現在、ド イツ、フィンランド、オーストラリアに本協会と同じような会が設立され、 他の国でも設立準備を始めています。本協会は国際スペースガード財団や各 国のスペースガード協会と、地球近傍小天体の地球衝突問題に対処するため 連携・協力して活動していきます。
確かに一部の雑誌では「日本支部」という表現が使われていましたが、こ れは誤りです。「日本スペースガード協会」は独立した組織であって、「国 際スペースガード財団」の中の下部組織ではありません。ただし、当然のこ とながらこの国際スペースガード財団や同様の目的を持った世界各国の組 織とは協力して活動していきます。(「日本支部」と報道されてしまったこ とは、こちらの連絡・確認ミスでした。お詫びして訂正させていただきます。)
十分な資金ができて財団となることができれば、それを利用して小天体の 発見・追跡活動を行ったり、その他の研究や情報の提供など様々な活動への 援助を行いたいと思っています。ただ、残念なことに、現状では金銭的な目 途はありません。今後、皆さんのご理解が得られて援助などがいただけるよ うになるよう、努力していきたいと思っています。
日本スペースガード協会は、大学・国立研究所の科学者を中心に設立され た、科学を基礎とする団体であり、迷信や、科学的説明が不可能で再現性の ない現象は扱っておりません。天文学はもとより、惑星科学、物理学、地質 学、気象学、さらには社会学など様々な側面から科学的にアプローチしてい ます。
宇宙条約により、宇宙は南極と同じように如何なる国・個人の所有物にな らないと 宣言されています。従って、宇宙に「不動産」という概念は適用 できません。日本スペースガード協会は、地球近傍天体(NEO)の発見と 監視を行い、またこれらの天体に関する広範囲な研究の促進と普及を図り、 天体の現象と危険性を研究者だけの情報にとどめずに広く市民的共有をは かるための団体です。何らかの物件の管理や、まして実際の防衛行為を行う ものではありません。
はい。年会費として正会員は、一口3,000円(正会員学生[院生含む]は一口 2,000円)、賛助会員は、3,000円から任意選択額(賛助会員学生[院生含む]は一口2,000円) をお支払いいただいています。これは、主に機関紙「ASTEROID」の発行およ び発送のために必要な経費です。 日本スペースガード協会の1つの目的として、地球に接近するような天体 についての情報を提供するといことがあります。「ASTEROID」は、その目的 のために発行されているものですが、衝突に関することだけでなく、太陽系 内の小天体についての各種の話題が掲載されています。
協会の目的に沿って次のような活動を積極的に進める方々が正会員です。
また、正会員には次のような権利があります。
- 地球近傍小天体(NEO)の地球衝突問題の正しい理解を普及する活動を行う。
- 全NEOの軌道決定を目指して、検出観測、追跡観測、軌道計算、お よびその協力、組織化を行う。
- NEO衝突の影響に関する理論的・実験的研究を行う。
- 協会の運営を行う。
(ただし、(c)、(d)の援助は、協会の財政が確立した時に行ないます。)
- 総会における議決権を有する。
- 「ASTEROID」を受け取る。
- 協会の開催する研究会・講演会に出席するような場合、協会に旅費 などの援助を申請できる。
- 研究費の申請ができる。
協会の活動を援助するために、賛助会費の納入や寄付をしていただきます。 「ASTEROID」を受け取ったり、協会の開催する講演会に出席することが できます。研究会に出席したい場合には、協会会長に出席許可の申請ができ ます。
いいえ、できます。機関紙「ASTEROID」は、インターネットのWWW のホームページでも見ることができます。WWWのホームページへのアクセ スは自由ですので、どなたでもご覧いただけます。アドレス(URL)は以下となります。
https://www.spaceguard.or.jp/ASUTE/index.htm
また、「日本スペースガード協会」のホームページもあります。アドレスは以下となります
https://www.spaceguard.or.jp
こちらも是非ご覧ください。
地球は太陽から1天文単位(約1億5千万キロメートル)離れたところを ほぼ円軌道を描いて運動していますが、この地球の軌道に接近するような軌 道を持った小天体を「地球近傍小天体(NEO)」と呼んでいます。NEO とはNear Earth Objetの略です。一般に太陽系の小天体とは小惑星や彗星 や衛星などの天体のことですが、NEOのかなりのものは小惑星です。小惑 星はその大部分は火星軌道と木星軌道の間に存在しますが、最近では地球軌 道の近くまでくるものも400個くらい発見されています。このような天体が 地球に衝突する可能性を持っています。観測が続けられるにつれて、発見さ れるNEOの数は増えてきています。
そうですね。小天体とはいっても大きさが数百メートルとか数キロメート ルのものが地球に衝突したら大変ですね。でも、ご安心下さい。現在、発見 されているものにつきましては、近い未来に地球に衝突するような危険なも のはありません。ただし、発見されていない小惑星がまだ非常にたくさんあ ります。そのような天体につきましては、衝突するかどうかは何とも言えま せん。日本スペースガード協会をはじめとして、世界で「スペースガード」 ということに取り組んでいる人の第一の目標は、地球に接近しうる天体を早 期にすべて発見することなのです。(直径1km以上の小惑星が地球に衝突 する確率は数十万年に1度程度だと考えられています。)
小惑星は発見されると仮符合と呼ばれる名称がつけられます。たとえば、 1996JA1といったもので、これは1996年の5月に地球から約45万キロメー トルに接近した小惑星です。そして、さらに同じ小惑星が何回か観測されて 軌道が正確に決まると確定番号がつきます。1996年7月末では、この確定番 号がついた小惑星が7072個あります。さらに、もう少しの観測で確定番号 が付くような小惑星も数千個ありますから、かなり軌道がよく分かっている 小惑星だけでも1万個以上はあります。この他に、軌道がまだあまり正確に 決められていないものや1度観測されただけのような小惑星もかなりあり ます。それでも、これは「氷山の一角」でしかないと言われれいます。太陽 系には本当に多くの小惑星があることになります。
小惑星トータチスにつきましては、地球に衝突するのではないかという報道が 1992年にありました。しかし、これはすぐに否定されており、現在では誰 も衝突するとは考えておりません。
トータチスは1992年の12月に地球に0.024天文単位(約360万km)まで接近しま した。この小惑星はおおよそ4年の周期で太陽のまわりを公転していますので、 現在は約4年ごとに地球に接近します。1996年では、最接近するのは11月30日 で、その距離は0.0354天文単位(約530万km)です。また、2000年の接近は、10月 31日で、その距離は0.0739天文単位(1100万km)です。地球−月の距離は40万km くらいですから、接近すると言ってもかなり離れたところを通過することになりま す。つまり、衝突が起こる可能性はありません。ちなみに、接近時の相対速度は 10km/s程度です。