ASTEROID
The Journal of Japan Spaceguard Association
Vol. 11, No. 4 November 2002, Founded in May 1992.
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まず、2002年7月14日にマイナープラネットセンターからMinar Planet Electric Circularにてアナウンスされた軌道に基づいて軌道計算を行い、地球との距離をグラフにしたものが図3です。この時点では、約20個の観測データから軌道が求められました。この図では、横軸が年(西暦)で、縦軸が地球と小惑星との距離になっています。距離の単位は天文単位(1天文単位は約1億5千万km)です。この軌道決定がなされた時点では、2019年に特に地球に接近するものではなかったことが分かりま す。 その代 わ り、2047年や2058年に地球に接近するという結果になっています。
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図3 小惑星2002 NT7と地球との距離の変化
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図4 小惑星2002 NT7と地球との距離の変化
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図5 小惑星2002 NT7と地球との距離の変化
2002年7月14日にマイナープラネットセンターから発表された軌道に基づいて計算されたもの。 2002年7月24日にイタリアの研究グループのホームページであるNeoDysに掲載されていた軌道要素に基づいて計算されたもの。 2002年8月7日にマイナープラネットセンターから発表された軌道に基づいて計算されたもの。
次に、7月24日にイタリアの研究グループのホームページであるNeoDysに掲載されていた軌道要素を使って、図3と同じ軌道計算を行った結果が次の図4です。この図を見ると、2019年くらいに確かに地球に接近していることが分かります。この計算では、2019年1月29日に地球に0.056天文単位(約840万km)まで接近することになっています。(この計算結果は、NeoDysに掲載されていたものとほぼ同じです。)なお、このNeoDys のデータと同じ時にJPLのホームページでもこの小惑星の軌道が掲載されていました。その軌道データを使って計算すると、ほぼ同じ結果になります。ですから、この時点では、確かに衝突の可能性はあったわけです。この時点での軌道決定には102個の観測データが使われていました。
そして最後に、発見されてから約1ヶ月が過ぎた2002年8月7日の時点での軌道決定値を用いて軌道計算をした結果が図5です。この時点では、観測数は180余りに増えています。地球との距離の変化の仕方は、図3や図4と似ていますが、極端に地球に接近するケース は無くな ったことが分かります。ということで、今後100年間はこの小惑星が地球に衝突する心配をする必要がなくなりました。ちなみに、2019年の接近については、2019年1月16日に地球に約5千万kmまで接近しますが、これではもうニアミスとも言えないですね。ということで、このニアミス騒動は一件落着ということになったわけです。
3 観測できるか小惑星2002 NY40 の地球接近
2002年8月18日には、小惑星 2002 NY40 が地球に約53万kmのところまで接近しました。この接近は事前に予測されたものであり、 最接近時 には、約9等くらいまで明るくなると予想されました。肉眼では無理ですが小型の望遠鏡や双眼鏡でも観測できるということで話題になりました。この小惑星の地球接近時の軌道を描いてみますと、図6のようになります。
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図6 2002 NY40が地球に接近したときの様子
左は黄道面に投影したもので、右が黄道面にほぼ垂直な面に投影したものである。中心に地球があり、地球を通る線が地球の軌道である。*と○印が付いている線が小惑星の軌道で印は0.2日(4.8時間)ごとの小惑星の位置を示す。最接近のとき(8月18日8時頃:世界時)の小惑星の位置が○印で示されている。円軌道は比較のために月の軌道を描いたものである。点線は、太陽の方向を示す。
この2002 NY40の接近は、実際にいろいろなところで観測されました。美星スペースガードセンターでも観測を行い、撮影された画像は動画として日本スペースガード協会のホームページで公開しています。ただし、ある程度小惑星の観測に慣れている人でないと実際に観測を行うのは難しかったかも知れませんね。
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