ASTEROID
The Journal of Japan Spaceguard Association
Vol. 11, No. 4 November 2002, Founded in May 1992.
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カリフォルニアの青い空
「オハヨ」の声とともにドアのノック。夜中一時間に一本ていど、貨物列車が宿泊施設の脇を警笛とともに通るのですが、それにお構いなしに眠りふけることができ、もう朝です。「ゴモン」とデンマーク人のルームメートにデンマーク語の挨拶を返してシャワー。そして登校。こんな生活を、月曜日から土曜日まで繰り返して日曜日は休みます。もっとも、ときどき、土日連続で休みになったこともありました。
休日は、残念ながら平日の疲れをとるので精一杯でした。多くの西欧人は余裕があります。ユニバーサルスタジオや、ラスベガスにも行く人が多かったようですが、私の場合、何人かと海岸に行って寝転がって教科書を読んで、少しだけ海に入ったり、ちょっとした街並みを歩くといった休日でした。カリフォルニアというと青い空、青い海、という印象が強いようで、参加する以前にも多くの人からうらやましがられましたが、滞在していたポモナは、西海岸から100km近く内陸に離れた乾いた土地の町でした。からっとしていたので、それが日々のストレスからの開放にはなってはいましたが。
とはいえ、平日もパーティのような企画が多くあり、その一つが「カルチャーナイト」でした。ISU の基本方針の一つである Intercultural にのっとり、各自が出身国の文化を紹介しあいます。日本からの参加者7名は、お祭りの雰囲気をベースにして、下町や国技について紹介しました。個人的には、日本から持ち込んだ小さな和太鼓を喜んでもらえたのが嬉しかったです(写真7)。もっとも、様々な場面で、日本人イコール特殊、というレッテルが多いのを痛感しました。 特に、 今回は西欧からの参加者が多数であったため、それを感じるのかもしれません。また、思い過ごしの面もあるのかもしれません。いずれにせよ、異文化交流とか国際交流という一言を豊かに考える機会が多く、ISU の基本理念通りに悩み楽しむ日々が続きました。
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写真7
日本からの参加者が担当するカルチャーナイト。手前で太鼓をたたいているのは著者。
スペースガードを紹介する機会
JSGA事務局より、倉敷で主催した国際ワークショップ International Workshop on Collaboration and Coordination Among NEO Observers and Orbital Computers (2001年10月23日〜26日) の集録や、アステロイドキャッチャーのCD-ROM、それぞれ約50組などを郵送していただき8月上旬に滞在先に届きました。
ちょうどその数日後に、自分の研究内容などをポスター発表で紹介する日が控えていたため、JSGA の活動を展示・実演させていただくことができました。また、それ以外にも、JSGA を紹介する機会がときどきあり、事務局より送っていただいたものは全て好評のうちに、配布し終わってしまいました。もちろん、アステロイドキャッチャーは大人気でしたが、集録も理工系だけでなく、様々な分野の方々からも関心が集まりました。また、講演に来ていただいた米国空軍や宇宙政策に関する方々にも興味をもって持ちかえって頂くことができました。
ただ、一つ後悔することは、専攻内で、国際協力について成功している4事例を絞るときに、私はスペースガードをとりあげることを提案し、JSGA のみならず、スペースガード財団やマイナープラネットセンター (MPC) を紹介したのですが、国際連合による UNISPACE III でのウィーン宣言にスペースガードの重要性が示されていることに触れなかった等の私の不勉強から、選外になってしまいました。また、国際的な規制をどのように克服しているかという実例がない、というのが採用されなかった理由です。これは、今後、自身がスペースガードの活動を通じて知見を深める必要があることを痛感しました。
なお、上述したように SSP の最後の段階では超小型衛星の利用価値が注目されました。そうなると、以前から様々なところでいわれていることではありますが、超小型衛星の活用には燃料切れなどで寿命になったスペースデブリの軌道を観測し把握し続けることが大切になります。低軌道物体は希薄ではありますが大気の抵抗をうけ、徐々に軌道高度を低下させて最後は地球に落下して燃えつきます。しかし、例えば SSTL などが多用する軌道高度は 700〜1000km くらいであり、それほど低くありません。スペースデブリになり地球に落下するまでには、数百年から数千年もかかってしまいます。超小型衛星が活躍する将来は、衛星軌道のスペースガードも、より大切になってきます。
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