ASTEROID
The Journal of Japan Spaceguard Association
Vol. 11, No. 4 November 2002, Founded in May 1992.
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SOHOのデータは、基本的にはインターネットを通じて誰でも受け取ることができる。そして、その画像から新彗星を見つけるのがアマチュア天文家の競争になっている。500個のうち、75パーセント以上がアマチュアによる検出である。
この2002P3と呼ばれる彗星を発見したのはドイツ人のアマチュア天文家のライナー・クラフトである。既に2001年8月から1年足らずで63個を発見している。しかし、その発見競争の激しさは、クラフトが発見した時刻に対して1時間43分遅れでダイアナ・マックエリニ、4時間4分遅れでウィリアム・トゥロストが検出していることでもわかるであろう。マイク・オーテスは136個も発見しており、現在のところ、トップである。日本では、8月3日に宇都宮の鈴木雅之さんが発見している。ぜひ、日本からももっと挑戦する人が現れてほしいと思っている。関心ある方は、http://soho.nascom.nasa.gov/ 及び、その関連サイトを見ていただきたい。
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小惑星の総数は予測より2倍多かった
宇宙に存在する固体物質の観測には、赤外線の観測が欠かせない。星間塵、銀河内塵、そして惑星間塵は赤外線で大部分の放射をしている。赤外線は大気に対して可視光のように透明なものもあるが、大気圏外に出なければ観測できない波長帯が多い。塵の振る舞いを調べることは、星の生成や銀河の進化の様子を知る上で欠かせない。そのため、NASAとESAは共同して、ISO(Infrared Space Observat- ory;赤外線天文衛星)を上げて1995年11月から1998年5月まで観測を続けていた。
アメリカのテラ・システム株式会社のエドワード・テデスコは、1996年と1997年にISOを使って、特定の領域の小惑星観測を行った。そして、直径1kmより大きい小惑星が1平方度当たり160個も検出された。この観測データから統計的な処理をすると110万−190万個の直径1km以上の小惑星があることになり、それまで可視光の観測で求まっていた値86万個より約2倍多いことがわかった。
小惑星は、太陽の光を受け、一部の光を反射し、一部の光を吸収する。吸収した光は熱エネルギーとなり、小惑星の表面温度を上げ、赤外線を放出する。この光の反射率が高いと可視光では明るく赤外線では暗くなる。通常、この計算をする時、小惑星表面での光の反射率は0.1程度にして計算する。上記の総数の不一致はおそらく反射率が0.1よりかなり小さいことを意味しており、小惑星の表面が炭素質物質を多く含んだC型隕石のように黒っぽいものであることを示している。
炭素物質を多く含んでいるC型小惑星は、太陽系誕生の頃には、木星に近いところに多くあった。それが壊されて直径1km程度の小惑星となったものが多いのではと考えられる。太陽系初期に、金星、地球、火星を形成したような炭素質物質の少ない、珪素物質(岩石等)の多い小惑星は、木星の重力作用をあまり受けなかった可能性がある。これらのことは、今後、小惑星の進化を考える上で重要なテーマになるであろう。

危険小惑星を示すウェッブページ
NEAが発見されると、国際天文学連合の小惑星センターがその観測を観測者に依頼するウェッブページがある。そこに発表されたデータを使って、将来の軌道を計算し、地球への衝突確率を計算しているウェッブページがある。これらに関心のある方は、次のウェッブページを見てもらいたい。
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